あなたの家族になりたい

 澪を連れて、農協を出る。
 助手席でシートベルトをつける澪は、まだ機嫌がよさそうだ。

「なんでそんな嬉しそうなんだよ」

「瑞希さんが『妻』って呼んでくれたので……えへへ」

「そんなに嬉しいか……?」

「はい! とても、嬉しいです!」

 こいつ、こんな声出せんだな……ってくらいでかい声で言われた。

「あー……、あれ、用意するか、指輪……」

「いいんですか!?」

「いいもなにも、必要だろ。着けといたら、あの手の声掛けも減るだろうし」

「嬉しいです。でも、そんなにないですよ。最近たまに、くらいです」

「たまにでもあるんなら、何とかしねえといけねえだろ。とりあえず、今は買い出し行くぞ」

「はい!」

 ……澪を見ると、やっぱりニコニコしている。なんかムカつくから、腕を引っ張って耳元に顔を寄せた。

「今夜、寝られると思うなよ」

「え、な、なんでですか……? えっと、はい……楽しみ……間違えました、早めに瑞希さんの部屋に行きます」

「何も変わってねえだろ……」

 アホか。何でそんなに嬉しそうなんだよ。
 つまんない嫉妬も、笑って受け入れられちまうと、なんかイラついてた自分が馬鹿みたいだ。
 どうにもこの苛立ちは伝わんねえし、澪が嬉しそうだから、もう諦めてエンジンをかける。