あなたの家族になりたい

 日曜日の夜。

 お義父さんとお義母さんが帰ってきて、みんなで晩ごはんを食べたあと、瑞希さんに呼ばれた。


「澪ー、ちょっといい?」

「はい!」


 瑞希さんはリビングの棚から、花音さんの結婚式のアルバムを出してきた。


「お前も、こういうのしたい?」

「……えっと……」


 アルバムの中で、花音さんが満面の笑みを浮かべながらドレスをひるがえしている。

 ……私には、こんなきれいなものが似合う気がしない。

 しないけど……。

 花音さんの隣にはタキシード姿の須藤さんが微笑んでいる。

 瑞希さんがそういうのを着るなら、隣に並ぶのは私がいい――そう思うのはワガママかな。


「俺は、こういうの、お前に着てほしいけど」

「……着たい、です」

「そう。じゃあ、頑張ろう」

「……はい」


 アルバムをめくる。

 どのページも、すごく輝いて見える。

 ふと顔を上げると瑞希さんが私を見ていた。

 キスしてほしかったけれど、お義父さんもお義母さんもいるから、今は黙って少しだけもたれかかった。

 触れた箇所が温かい。


「瑞希さん」

「ん?」

「私、ここのうちの子になれましたか?」

「んー……」


 瑞希さんは珍しくちょっと困ったような顔をした。


「うちの子じゃなくて、俺の妻になってくれよ」

「……ふ、不束者ですが、よろしくお願いします……」


 真っ赤な顔の瑞希さんは、まったく怖い人なんかじゃなかった。