あなたの家族になりたい

 飯の後、片付けは一緒にやって、俺は畑に向かう。

 家を出るとき、澪は「行ってらっしゃいのキスもしていいですか? さっきみたいなのでいいので」と言ってきた。

 ……行ってらっしゃいのキスで、ヤるときみたいなキスは普通しねえんじゃねえかな……。


 一回寝たくらいで彼女面されるのは面倒なはずなんだけど、澪がやたら甘えるようになったのは、まあいいかと思ってる。

 元からツンケンしてたわけじゃなくて、少しずつ近寄ってきていたのが、寝たことでわかりやすくなっただけだし。


 水やりを済ませて家に戻ると、ちょうど澪も家のことを終えていた。

 時間はまだ午前中の早い時間で、晩飯どころか昼にも早い。


「……ちょっと、コンビニ行ってくる」

「わかりました」


 澪がわかりやすくしょげた顔をするんで、つい笑ってしまう。


「すぐ戻るって。……ゴム、あったほうがいいだろ」

「わ、はい、わかりました。待ってます!」


 一瞬で笑顔になった澪に、また触れるだけのキスをして家を出た。

 帰ると澪は玄関で待ち構えている。


「……俺の嫁さんはずいぶん甘えたになったな」

「嫌ですか?」

「全然」


 抱き上げて二階に上がる。

 カーテンは閉めたままだけど、外が明るいから澪の顔がよく見えた。


「どうしてほしい?」

「……昨晩みたいな、キスしてほしいです」

「キスだけでいいんだ?」

「い、意地悪ですね……」

「次は、起きたときも隣にいてくれ」

「はい。必ずいます」


 顔を寄せるとハミガキ粉の匂いがした。