あなたの家族になりたい

 美園さんのとこで事務やってたなら、畑仕事は無理そうだな。

 つーか、あの細腕じゃ外での仕事なんて絶対無理だ。

 腕なんか、俺の半分くらいしかねえし……。

 育てたい花とかあればやらせてもいいけど、そもそもそういう好みや要望があるかもわからない。

 それ以前に、うちの商品を把握してるかも謎だし。

 ……確認したほうがいいのか?


「親父ー」

「んー?」


 出荷用の花を積んでいた親父のところに顔を出す。

 手伝いながら澪のことを聞いてみる。

 そもそも親父とお袋は、あれをどうする気なんだ。


「基本的には母さんの跡継ぎだな。農園の経営面での管理。雇ってる社員もそうだし、あと由紀で持ってる土地もあるし」

「土地って、江里さんに任せっぱなしじゃねえの?」


 この間、藤乃のところにいた江里理人の爺さんがうちの比じゃないくらい土地を持っていて、一族で不動産業をやっている。

 理人も大学を出てから管理に携わっているのだと藤乃が言っていた。

 マンションや家の造園周りに須藤造園が入っているし、うちも土地の管理を江里の家に任せていて、須藤経由で花壇用の花の納品なんかもしている。


「丸投げってわけにはいかねえよ。お前……さては何にも分かってねえな?」


 親父は呆れた顔で俺を見る。

 そうみたい。

 なんつーか、あんまり澪に偉そうに言える感じじゃなかった。


「あー、クリスマス過ぎたら落ち着くから、一回澪ちゃんと一緒にうちでやらねえといけない仕事をまとめて教える。……お前が高校出たときに一度説明したんだがな」

「うん……」

 その後は親父の手伝いをして、いくつか配達に行く。

 帰って夕飯食ってドラマ観ようとしたら、澪が寄ってきた。

「朝のヨーグルト、買っておきました」

「お、サンキュ。……次からは親父に買わせろ」

「は、はい……。あと、一緒にプリンも買ったので、よろしければ……」

「マジで。食うわ。ありがと」

「……いえ、そんな」


 澪はホッとしたように頷いてからリビングを出て行った。

 冷蔵庫にあったプリンは少し前にお袋が澪に食べさせたのと同じやつで、ちゃんと覚えていたらしい。

 ……「つーか、こいつだって俺のこと何も知らねえだろ」――そう言ったのを、ちょっとだけ反省した。