あなたの家族になりたい

 畑に出て、肥料を作って寝かせる。

 クリスマスに向けて、藤乃が好きそうな花を収穫してまとめて車に積む。


「須藤さんとこ行ってくる」


 親父に声をかけると、顔を上げて手を振ってきた。


「おう。あ、花音に近いうちに顔出せって言っといて」

「なんで?」

「お前の嫁見せるんだよ」

「嫁じゃねえけど……伝えとく」


 断じて嫁じゃない。……でも、そのうちそうなんのか? いや無理だろ。俺の顔見て怯えてんだぞ。

 藤乃に愚痴ってやろうと思ったのに、須藤さんとこにいなかった。


「藤乃さんなら、お義父さんと出てるよ」


 花屋にいたのは藤乃のお袋さんと花音で、なんやらブーケの作り方を教わっている。


「花音ちゃん、花の扱いは慣れてるから、あとはセンスね」

「……それが一番難しいです」

「慣れよ、慣れ」


 藤乃もそうだけど、お袋さんはさらにセンスがよくて、手さばきが素早い。花を集めたと思ったら、一瞬で綺麗にまとまっている。


「そりゃ、私だって子供の頃からやってるもの」

「お義母さんの実家も花屋さんだったんですよね」

「そうよ。あ、そうだ。瑞希くんお見合いしたんでしょ?」


 アレンジをラッピングしながら聞かれる。

 花音はバケツに花を入れながら顔を上げた。


「藤乃さんから写真見せてもらったよ。綺麗な人だね。お兄ちゃんと比べると美女と野獣」

「あら、瑞希くんだって顔立ちは綺麗よ。……ちょっと眉間のしわが深いけど」

「その相手が今日からうちに住んでるから、顔出せってさ」


 そう言うと、お袋さんと花音が並んでカレンダーを見上げる。

 ……先月嫁姑になったばっかのはずなのに、なんで微妙に動きまで似てんだ……?


「んー……今月は……忙しいですよね」

「そうねえ、申し訳ないけど……お正月かな……」

「わかった。親父に伝えとく」

「よろしく。藤乃さんと一緒に挨拶行くね」

「あ、じゃあ私たちも行くわ。小春さんも由紀さんも飲みたいだろうし」

「わかりました。それも伝えておきます」



 軽く頭を下げて店の裏口から出る。

 なんつーか、花音は花音で、もうしっかり須藤家に馴染んでるように見える。

 ……あの女も、そのうちうちに馴染むんかな……。なんかピンとこねえ。