涼しい風が吹いて髪が靡くのを手で押さえながら静かに川を眺める。


依桜さんの家庭の事情を知って、私と少し似ているんだとわかった。


二人とも家庭の事情を話しまくっているとなぜか涙が溢れてきて二人とも泣く事になったのは内緒。


「依桜さん、私以外と限界が近かったんだなって思いました」


「それ俺も思った」


体育座りを崩して芝生に寝転びながら鼻声気味に話す。


「喋ってみるとすっごくスッキリしました」


「俺も」


ははっと笑いながら依桜さんが同意してくれるもんだから私もクスッと笑ってしまった。


「ねぇ杏奈。俺さ、杏奈の事が好き」


「えっ⁉︎」


今までで一番大きな風が吹いたのほぼ同時だった。


今、"好き"って言った……?


さっきまで家庭の事情を重々しく話していたのに突然そんな事を言うから私はびっくりして思いっきり起き上がって依桜さんの方を見る。


「ずっと前から好きだった」


そうやって言って笑う依桜さんの顔は嘘を言っているようには見えなくて、本当の事を言っているような気がして。


依桜さんが私の事を好きだった……?


さっき依桜さんの口から放たれた言葉が頭の中を何回も流れてリピートされている。


"ずっと前から好きだった"。その言葉。たった一言なのにすごく破壊力があって嬉しかった。


だから私も自分の気持ちを伝えようと思った。


「私も、私も依桜さんの事がずっと好きでしたっ!」


言った瞬間、顔が今までにないくらい熱くなって耳まで熱くなって今の私は完全にゆでだこ状態だと思う。


「それ、本当……⁉︎」


「は、はいっ」


もうどうにでもなれ!と思って思いっきりそう言うと依桜さんは今までにないくらい大きな声を上げて、「やった!」言ってガッツポーズをした。


するといきなり腕を掴まれ、バランスを崩してしまいそのまま芝生に倒れ込む。


「ちょっと何するんですか!」


びっくりしちゃったよ!


そう言って気付いた。依桜さんの顔が目の前にある事に。


「そんな顔まで可愛いとか反則かよ」


「えっ……」


そんな綺麗な顔をしてそんな事を言われたら頭がパンクしちゃうよ!と思っていた時、またもあの時と同じ感覚が唇を襲った。


すぐ近くに依桜さんの綺麗な顔があって、唇の感覚が違うくなるような変な感じが。


私は目を見開く。


また、私は依桜さんとキスしてる……⁉︎


すぐに顔を戻した依桜さんは何もなかったかのようにいつも通りの顔をしていた。


あれっ?でも少し顔が赤いような気もする……?


夕陽に照らされているせいか、それとも本当に赤くなっているのかはわからなかったけど、赤くなっているのは間違いなかった。