「お待たせしましたっ」
食堂を急いで出て廊下を走りながら兼保健室に向い勢いよくドアを開ける。
急いできたから走っちゃいけない廊下を走ってきちゃったよ……。
兼保健室にはもう不知火さんの姿があった。
「急に呼び出してごめんね。急に撮影が入っちゃって……」
「全然大丈夫です!早速始めますね」
「ああ」
椅子を持ってきて不知火さんと向き合いになるように座る。
あれ、なんだか顔のアザが増えてる……?
右頬のガーゼを剥がしアザの状態を確認しようと思った時、ふと思った。
さっき食堂で不知火さんを見た時はガーゼで隠れてたからわからなかったけどアザが増えてる、よね……?
「どうかしたか?」
「い、いえ。なんでも……」
私がするのはアザをわからなくする事だけ。だから余計な事は考えずに私はメイクに集中しないと。
そう思い直しコンシーラーに手を伸ばす。
「このアザ、女の彼氏に殴られてできたんだけどさ、ほんと痛かったんだけど」
「そ、そうなんですか……」
そんな自慢そうにして言う事じゃないと思うけど……。
ニコニコしながらアザの経緯を語りだす不知火さん。
今回ばかりは急いでいるから右から左と流してメイクに集中する事にした。
「できました」
「ありがとう。やっぱり綺麗だね深海さんのメイクは」
「ありがとうございます!」
手鏡でメイクの状態を確認してから満足そうに口角を上げた不知火さん。
「本当にありがとね」
そう言ってスクールバックを肩に回し、急ぎ足で兼保健室を出て行った。
「疲れた……いつもよりも何倍も早くメイクをしたから手が疲れちゃったよ……」
メイクをしていた時に座っていた椅子から背もたれのある椅子に座り直し背もたれに身を預ける。
「あっ終わった?お疲れ様〜」
「安西先生!今終わって不知火さんは出ていきましたよ」
すごく急いでいるような感じだったけど今何時だろう?
メイクをするのに集中していたから時間の感覚がわからなくて保健室に置いてあるデジタル時計に目を通す。
「1時20分⁉︎」
なんと五限目開始時刻から20分も過ぎていた。
嘘でしょ⁉︎びっくりし過ぎて叫んじゃったよ……。
「そういえば杏奈ちゃんが真剣そうな顔をしてる時にチャイム鳴ってたわよ?集中してたみたいだから声はかけなかったんだけど……」
嘘、でしょ……。授業をサボってしまった……。
今まで無断で授業を休む事などなかったため、罪悪感が込み上がり椅子の肘掛けに肘をついて頭を抱えてしまう。
どうしよう……。五限目の授業の先生すっごく怖い先生なのに……。
深いため息が溢れそうになった時、安西先生の困ったような声が聞こえてきて顔を上げた。
「どうしたんですか?安西先生」
「あのね、このブレスレットなんだけど……」
そう言って見せてくれたのは綺麗なダイヤが5つ付いている女物のブレスレットだった。
女物のブレスレット?
「これ、誰のなんですか?」
重い腰を上げ安西先生のそばに行くと安西先生は困ったように眉の端をハの字に下げた。
「これ多分不知火君のものなのよ。なんだかすっごく大事そうに眺めているのをよく見るわ」
不知火さんのブレスレットなんだ……。さっきのメイク中に落としちゃったのかな?
「どうしたらいいかしら……もしかしたらお守りかもしれないし……」
「それなら私が届けに行きましょうか?」
もう授業に遅刻しちゃったし。一度ミスったらもうどうにでもなれって感じになっちゃうのが私のいけないところでもある。
「本当?それならすごく助かるわ!」
さっきまでの顔とは違いパァーッと顔を明るくさせた安西先生を見ると私の心も軽くなった。
「では行ってきますね!」
「頼んだわ〜」
「はいっ」
安西先生からブレスレットを受け取り兼保健室を出る。
授業は体調が悪くなったために早退しましたって安西先生に伝えもらえる事にもなったから安心安心!
そう思って歩き出そうとしたんだけど……。
「私、どこにこのブレスレットを届けに行けばいいんだろう?」
何も考えずに出てきてしまった……。今日どこで撮影するかなんて聞いてないよ。
聞いてたのは女の人の話しばかりだったから……。もっと撮影の事を教えておいてほしかった……。
どうすればいいかわからず途方に暮れているとスマホの
着信音が流れ出した。
誰だろう?
すぐに制服のポケットからスマホを取り出すと不知火と表示されていた。
すごくタイミングがいい!
どうすればいいかわからなかったところに一筋の光が差し込んだような思いを胸に通話ボタンを押す。
「はい、深海です」
「あっ深海さん?急にごめん。もし良かったらなんだけど今から俺のブレスレットを届けてくれないか?こっちになくて、多分兼保健室にあると思うんだけど……」
いつもの落ち着いた声とは違い少し焦ったような声をしている。
もしかしたらずっと探し回っていたのかもしれない。
「ちょうど今から届けに行こうと思ってました」
「本当?じゃあ場所の地図を送るから届けに来てもらってもいいかな?すごく大切なものだから手元にないと落ち着かなくて……」
「わかりましたっ!」
前と同じくすぐに切られた通話の後に地図が送られてきてきた。
学校から案外近い!これなら走れば十分で着くはず!
何時までにとかは言われていないけどなるべく早く私に行った方がいいに決まってる。
「よし、行こう!」
行き先がわかりやっと兼保健室前から動く事ができた。
食堂を急いで出て廊下を走りながら兼保健室に向い勢いよくドアを開ける。
急いできたから走っちゃいけない廊下を走ってきちゃったよ……。
兼保健室にはもう不知火さんの姿があった。
「急に呼び出してごめんね。急に撮影が入っちゃって……」
「全然大丈夫です!早速始めますね」
「ああ」
椅子を持ってきて不知火さんと向き合いになるように座る。
あれ、なんだか顔のアザが増えてる……?
右頬のガーゼを剥がしアザの状態を確認しようと思った時、ふと思った。
さっき食堂で不知火さんを見た時はガーゼで隠れてたからわからなかったけどアザが増えてる、よね……?
「どうかしたか?」
「い、いえ。なんでも……」
私がするのはアザをわからなくする事だけ。だから余計な事は考えずに私はメイクに集中しないと。
そう思い直しコンシーラーに手を伸ばす。
「このアザ、女の彼氏に殴られてできたんだけどさ、ほんと痛かったんだけど」
「そ、そうなんですか……」
そんな自慢そうにして言う事じゃないと思うけど……。
ニコニコしながらアザの経緯を語りだす不知火さん。
今回ばかりは急いでいるから右から左と流してメイクに集中する事にした。
「できました」
「ありがとう。やっぱり綺麗だね深海さんのメイクは」
「ありがとうございます!」
手鏡でメイクの状態を確認してから満足そうに口角を上げた不知火さん。
「本当にありがとね」
そう言ってスクールバックを肩に回し、急ぎ足で兼保健室を出て行った。
「疲れた……いつもよりも何倍も早くメイクをしたから手が疲れちゃったよ……」
メイクをしていた時に座っていた椅子から背もたれのある椅子に座り直し背もたれに身を預ける。
「あっ終わった?お疲れ様〜」
「安西先生!今終わって不知火さんは出ていきましたよ」
すごく急いでいるような感じだったけど今何時だろう?
メイクをするのに集中していたから時間の感覚がわからなくて保健室に置いてあるデジタル時計に目を通す。
「1時20分⁉︎」
なんと五限目開始時刻から20分も過ぎていた。
嘘でしょ⁉︎びっくりし過ぎて叫んじゃったよ……。
「そういえば杏奈ちゃんが真剣そうな顔をしてる時にチャイム鳴ってたわよ?集中してたみたいだから声はかけなかったんだけど……」
嘘、でしょ……。授業をサボってしまった……。
今まで無断で授業を休む事などなかったため、罪悪感が込み上がり椅子の肘掛けに肘をついて頭を抱えてしまう。
どうしよう……。五限目の授業の先生すっごく怖い先生なのに……。
深いため息が溢れそうになった時、安西先生の困ったような声が聞こえてきて顔を上げた。
「どうしたんですか?安西先生」
「あのね、このブレスレットなんだけど……」
そう言って見せてくれたのは綺麗なダイヤが5つ付いている女物のブレスレットだった。
女物のブレスレット?
「これ、誰のなんですか?」
重い腰を上げ安西先生のそばに行くと安西先生は困ったように眉の端をハの字に下げた。
「これ多分不知火君のものなのよ。なんだかすっごく大事そうに眺めているのをよく見るわ」
不知火さんのブレスレットなんだ……。さっきのメイク中に落としちゃったのかな?
「どうしたらいいかしら……もしかしたらお守りかもしれないし……」
「それなら私が届けに行きましょうか?」
もう授業に遅刻しちゃったし。一度ミスったらもうどうにでもなれって感じになっちゃうのが私のいけないところでもある。
「本当?それならすごく助かるわ!」
さっきまでの顔とは違いパァーッと顔を明るくさせた安西先生を見ると私の心も軽くなった。
「では行ってきますね!」
「頼んだわ〜」
「はいっ」
安西先生からブレスレットを受け取り兼保健室を出る。
授業は体調が悪くなったために早退しましたって安西先生に伝えもらえる事にもなったから安心安心!
そう思って歩き出そうとしたんだけど……。
「私、どこにこのブレスレットを届けに行けばいいんだろう?」
何も考えずに出てきてしまった……。今日どこで撮影するかなんて聞いてないよ。
聞いてたのは女の人の話しばかりだったから……。もっと撮影の事を教えておいてほしかった……。
どうすればいいかわからず途方に暮れているとスマホの
着信音が流れ出した。
誰だろう?
すぐに制服のポケットからスマホを取り出すと不知火と表示されていた。
すごくタイミングがいい!
どうすればいいかわからなかったところに一筋の光が差し込んだような思いを胸に通話ボタンを押す。
「はい、深海です」
「あっ深海さん?急にごめん。もし良かったらなんだけど今から俺のブレスレットを届けてくれないか?こっちになくて、多分兼保健室にあると思うんだけど……」
いつもの落ち着いた声とは違い少し焦ったような声をしている。
もしかしたらずっと探し回っていたのかもしれない。
「ちょうど今から届けに行こうと思ってました」
「本当?じゃあ場所の地図を送るから届けに来てもらってもいいかな?すごく大切なものだから手元にないと落ち着かなくて……」
「わかりましたっ!」
前と同じくすぐに切られた通話の後に地図が送られてきてきた。
学校から案外近い!これなら走れば十分で着くはず!
何時までにとかは言われていないけどなるべく早く私に行った方がいいに決まってる。
「よし、行こう!」
行き先がわかりやっと兼保健室前から動く事ができた。



