私はイケメンさんの傷をメイクで隠すらしいです

「ただいま……」


依桜さんとわかれた後、すぐに家に帰った。


本当は寄り道とかしたかったけど、今日はできないから。


すぐに手を洗って夜ご飯の準備をしてある部屋に持っていく。


「おばあちゃん、ご飯持って来たよ」


私はゆっくり歩いてベッドに備え付けられている机にお盆を置いた。


ここはおばあちゃんの部屋。


おばあちゃんは私が置いたご飯を覗き込み一気に私に投げつけた。


「熱っ……」


おばあちゃんが投げたご飯の中にはお味噌汁も置いていたからそれが私にかかった。


「お前は誰だ……明子を呼んで!」


また始まった……。


「おばあちゃん、お母さんはもういないって何回言ったらわかるの」


「明子を呼びなさい、明子を呼んで……」


おばあちゃんは認知症だ。


認知症になってからどれくらい経ったのかなんてもう覚えていない。


私はすぐにおばあちゃんを落ち着かせようと背中をさする。


「明子……。明子……」


「おばあちゃん、もう今日は寝よっか。疲れちゃたんだよね」


ヒリヒリと痛む手の痛みをなんとか我慢しながらおばあちゃんが寝るまでずっとそばで見守った。


おばあちゃんが寝てからすぐに散乱しているご飯を片付けてキッチンに戻る。


「いつまで続くのかな……」


お母さんとお父さんはもうこの世にはいない。私が小さい時に交通事故で亡くなっちゃったんだとか。


それからはおばあちゃんが私を育ててくれていた。


だからおばあちゃんの事は大好き。大好きなのに、どうしてこんなにも苦しいんだろう。


私は痛む手を水で冷やしながらただただぼーっと水を眺める。


いつの間にか私の腕、こんなにも傷が増えちゃったんだなぁ。


きっと火傷になるであろう手を冷やすために袖をまくると至る所から見えるアザの数々。


毎週月、木曜日は自宅に介護の人が来てくれるからまだましだけどそれでも大変なものは大変。


いつかは終わると思うし深く考えない事!


私はいつも自分で自分を慰める。


この事を知っている人は誰もいないから。


だからいつも私はこう言うの。


「大丈夫、大丈夫。私はよく頑張ってるよ」


明日も頑張れるように言う魔法の言葉。


いつかおばあちゃんの認知症がなくなってまた楽しく笑えるようになって欲しいと願いながら–––。