文化祭当日朝、私はまた兼保健室に来ていた。


「とうとうこの日が来たね!」


朝にも関わらずすごく元気な姫華さん。


「はいっ!」


一ヶ月間ずっと頑張って準備してきたんだから!


メイク研究は自分で褒めてあげれるくらい頑張った。


「私はまずクラスの出し物の方に行かないといけないからメイクとかは済ませといてね!」


クラスの出し物……姫華さんやるんだ!


クラスの出し物とは、自分達のクラスの出し物でやりたい人が半数以上いたクラスだけがやるもの。


やりたい人がいなかったらやらないクラスもあって私のクラスは出し物をしない事になっていた。


メイクとかの事が忙しくて難しそうだったから参加しないにしたんだけど、私のクラスはやりたくない人のほうが多かったらしくやらない事になったんだよね。


「実行委員にもなってるのにすごいですね!」


「うんっ!最後の文化祭だからね!」


さすが姫華さん!


「それに比べて依桜ったら……」


兼保健室のベッドに寝転がってスマホをいじっている依桜さんを見て姫華さんはぷくーっと頬を膨らました。


「文化祭なんて何が楽しいんだよ、あんな面倒くさい行事」


やっぱりというか依桜さんは文化祭は乗り気じゃないみたい。


文化祭が近づくにつれ少しずつ依桜さんのテンションも下がっていっていたのを私は知っている。


「何言ってるのよ!久しぶりに撮影が入ってないんだから存分に楽しまないと!」


「俺は撮影のがましだ」


「なんて事を……⁉︎」


このやりとりもここ一ヶ月で数えきれないほど聞いたんだよね。


毎回依桜さんが撮影のがましと言うと姫華さんは目を見開いて驚いている。


「姫華さん、そろそろ行った方がいいんじゃないですか?」


「あっ本当だ!もうこんな時間!それじゃあまたあとでね!」


「はいっ!」


「じゃあねー」と言いながらそそくさと兼保健室を出て行った姫華さん。


「私もそろそろ行こっかな」


メイクの時間もあるし少し早めに動いていた方がいいよね!


「じゃあ依桜さん、私も行きますね!」


ベッドに横たわっている依桜さんに一言かける。


姿はちょうど見えてないんだけどまぁいっか!


そう思って出ようとしたんだけど……。


「楽しみにしてる」


ボソッと呟かれた言葉。だけど私にははっきりと聞こえた。


今、楽しみにしてるって言ってくれた?


「はいっ」


依桜さんからそう言われて私は嬉しく思いながら兼保健室を出た。


「私、どうしちゃったんだろう……」


昨日と同じように熱くなる顔をなんとかしようと思いながら歩き出した。


今はそれよりもコンテストの方に集中しないとっ