文化祭まで残り一ヶ月。今私にできるのは自分に似合うメイクを研究する事。


一色のメイクは揃っているからそこからどれがいいかを選別していこう!


そう思って私は一ヶ月間、毎日鏡の前でメイクを研究した。


その間に姫華さんと服を買いに行ったり美容院に行って髪の毛を整えてもらったりとしているとあっという間に一ヶ月は過ぎていった。


「杏奈、本当に良かったの?あんなコンテストになんか出る事になって」


文化祭の前日、最終確認として本番通りの格好とヘアメイクをして兼保健室に来ていた。


姫華さんは文化祭の実行委員になっているらしく今日は来れないらしい。


だから今日は依桜さんと二人だけ。安西先生もいないんだよね。


「はいっ!初めはびっくりしたけど私のために姫華さんは動いてくれてるし、今は姫華さんが愛莉さんに"いじめはしないように"って釘を刺してくれているからいじめもなくなってますし」


「そっか、まぁ杏奈がそれでいいなら別にいいけど」


今はいじめもないし目的を持って動けているからすごく充実していると思っている。


それもこれも全部姫華さんと依桜さんのおかげ。


「そう言えばどうして依桜さんは私がいじめられてたって知ってたんですか?」


私はいじめられていた事を誰にも言っていなかったのに。


ふと思って聞いてみるとそんな事かとでも言いたそうな顔をしながら教えてくれた。


「姫華から聞いたんだ。杏奈が今何か困ってる事があるかもしれないから聞いてあげてって。なんかクレープ食べてたら暗かったとか訳のわからない事を言ってたけど」


姫華さんが?……クレープって言ったら姫華さんとクレープを食べに行ったあの時だよね?


ちょうどその頃が一番なキツかったと思っていたからさすが姫華さんとしか言いようがなかった。


「そうだったんですか……さすがですね姫華さんは」


私がクスッと笑うと依桜さんも笑ってくれた。


「なんか久しぶりに杏奈の笑った顔が見れた気がする」


「えっ?そうですか?」


急にそんな事を言われてキョトンとしてしまう。


「前は貼り付けたように笑ってたから。久しぶりにちゃんと笑ってる笑顔が見れて良かったよ」


そう言ってふわりと笑った依桜さん。


「私は依桜さんのふわっと花が咲いたように笑う笑顔が好きですっ」


いつも思う。雰囲気はちょっと怖そうなのに笑うとすごく可愛いのがギャップだなって。


「そ、そう、かよっ」


私がそう言うと、なぜか赤を赤らめながらそっぽを向いてしまった。


なんだか最初に会った時と随分印象が変わったよね。


微笑ましく思いながら私は兼保健室にかかっている時計に目を向ける。


「えっ⁉︎もう七時まわってる⁉︎」


なんと時間は午後の七時をまわっていて完全下校時間を過ぎていた。


「依桜さん!もう七時です!早く帰らないと!」


「まじか、完全下校過ぎてるなー」


なぜか呑気にそんな事を言っている依桜さんの手をとり急いで学校を出た。