それから私はすごく泣いて、もう一生分の涙を出したんじゃないかってくらい涙を流した。
「だいぶ落ち着いた?」
「はい……すみません。思いっきり泣いて」
「全然いいよ。全部涙で流せたならそれで」
不知火さんは私が泣いている間ずっと背中をさすってくれていた。
いつの間にかドア付近からベッドに移動していて私の隣に不知火さんが座って落ち着かせようとしてくれてたんだと思う。
「それで、本題に戻るけど深海さんは"いじめ"られてたんだよね」
"いじめ"。そう聞いてやっぱりあれはいじめだったんだと再度認識する。
「はい……」
「いつ頃から始まったとかわかる?」
いじめがいつ頃から始まったのかって事だよね。
「多分なんですけど、私が不知火さんのブレスレットを撮影スタジオに届けに行った次の日からだと思います」
「次の日から……」
あの時、シャッター音がしたほうを探すでもしていたらこんな事にはならなかったのかな。
あの時の事を振り返っているとブレスレットを届けに行った次の日の朝に写真が置かれていた事を思い出した。
「あの、その次の日の朝に私の机に写真が置かれていたんです」
「写真?」
「はい、私が不知火さんにブレスレットを届けている時の写真で私の顔が黒く塗りつぶされていたんですけど……」
「えっ……?」
びっくりしたように声をこぼした不知火さんはこれでもかと目を見開いていた。
「じゃあ杏奈がいじめられるようになったのは俺のせいって事、か……」
「いやっそんな事はないと思います」
きっと前々から私の事が気に入らなかったんだと思う。
……あれ、今、不知火さん……。
「私の事、"杏奈"って呼びましたか?」
前まで"深海さん"じゃなかったっけ……?
「うん。だって、今更苗字で呼ぶとか他人かよって感じがしたからいいかなーって。もしかしてダメだった?」
申し訳なさそうに手を首筋にまわした不知火さん。
ダメっていうか、むしろ……。
「嬉しい、です……」
って私何言ってるの⁉︎
自分でも何を言っているのかわからずどんどん顔が熱くなっていく。
「い、今のは忘れてくださいっ」
勢い余って訳のわからない事を言ってしまいきっと今の私の顔は真っ赤だろう。
「いや、むしろめっちゃ覚えてる。し、杏奈も俺の事は"依桜"でいいよ」
「えっ……」
依桜は不知火さんの下の名前。
私、名前で呼んでもいいの?
不知火さんからそう言ってもらってすごく嬉しかった。
「じゃあ、依桜さんって呼びます……」
「ああ」
今まで不知火さんって呼んでたからなんだか違和感があるなけど嬉しいっ
そう思っていた時、突然ガラガラッと保健室のドアが開いた。
「杏奈ちゃん!」
可愛らしい声で私の名前を呼びながら入ってきたのは姫華さんだった。
「姫華さん⁉︎どうしてここに……?」
「もう杏奈ちゃんが心配で心配で飛んできちゃったよ!」
「えっと、どういう事ですか……?」
姫華さんは私達がここで話をしていた事を知っていたようだけど……。
私は訳が分からず姫華さんの事を見ていると依桜さんが補足してくれた。
「この時間に俺達が話すって事を元々姫華に伝えておいたんだよ」
「そうだったんですか……」
もしかして初めからそのつもりでわたしをここに呼んだのかな?
「それより、どうしたの⁉︎そんなに目真っ赤にして。まさ依桜に泣かされたの?」
じーっと私の顔を見てからびっくりしたように私の顔を両手て挟んでまじまじと見ている姫華さん。
「俺がそんな事するわけねーだろ」
「本当かなー?依桜はいろんな女をたぶらかしてるからなー。もし杏奈ちゃんにも同じような事したら私が怒るんだからね」
「へいへい」
面倒くさそうに返事をした依桜さん。
やっぱり依桜さんと姫華さんは仲がいいんだな。
二人の会話を見ていると喋り方とかからすごく仲がいいんだなという事が見て取れる。
「それより今は杏奈がこれからどうするかだろ」
「これからどうするか、ですか……」
私も現状をどうにかしたいとは思っているけど、誰が私にあんな事をしているのかわからないしどうすればいいかわからない。
みんなが黙り込み保健室に沈黙が流れる。
「あっそうだ!」
シーンとしていた空気を姫華さんの声が吹き飛ばした。
「今度の文化祭で恥かかせてやればいいんだよ!」
「恥、ですか?」
「うん!」
自信満々に言った姫華さんは思いっきり立ち上がってガッツポーズをしていた。
「多分杏奈ちゃんをいじめてる人はきっと何かがあって嫉妬してるんだと思うの」
嫉妬……。それなら思い当たる事がある。
「もしかしたらなんですけど、前私の机に依桜さんとのツーショットの写真が置いてあって、しかも私の顔が黒く塗りつぶされていたんです」
あの写真は気味が悪くてその日のうちに家のゴミ箱に捨ててしまって今はもう持ってはいない。
「多分それだね。依桜はモテるからねー女子が嫉妬するのもおかしくはない」
「やっぱり俺のせいか……」
「あんたのせいじゃないわよ。悪いの杏奈ちゃんをいじめてる人だから」
肩を落としながらシュンっとしてしまった依桜さんの背中を姫華さんがバシンッと叩く。
結構な音がしていたから相当痛かったんだろうなと顔を顰めた依桜さんの表情を見て思った。
「それで、その人は多分SNSとかにストレス発散として悪口を書き込んでたりすると思うから……あっ、 あった!」
少し考えるようにスマホを操作した後、何かを掴んだのかパァーッと顔を明るくさせた姫華さん。
「ねえ杏奈ちゃん、杏奈ちゃんのクラスに愛莉って人いない?」
「愛莉、さん……?」
クラスの人と喋る事ないからそんなに名前とかはわからないけど……あっ愛莉さんってあの愛莉さんかな?
「あの、一人いるんですけど、すごく明るくていつも
二、三人の子と一緒にいます」
「ビンゴかなー。でもまだちゃんとはわからないから直接接触してちょっと喋ってみるね」
「は、はいっ」
すごいっ探偵さんみたい……!
トントン拍子で話が進んでいき、私が全然わからなかったいじめの犯人まで難なくわかってしまった。
「姫華、それでわかったとして文化祭でとか言ってたけどどうするんだよ」
「それはね、毎年文化祭で行われてる"ある人を大変身⁉︎一番上手くプロデュースするのは誰だ⁉︎"っていうコンテストがあるんだけどそれで恥をかかせてやろうと思って」
"ある人を大変身⁉︎一番上手くプロデュースするのは誰だ⁉︎"っていうのが毎年文化祭であるのかな?私は今年が初めてだからわからないけど……。
姫華さんも三年生だから毎年出てるのかな?
なんだかルンルンな姫華さんは楽しそうだった。
「まあ後の事は私に任せて!杏奈ちゃんは大船に乗った気でいてね!」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
やっぱり姫華さんは優しいな……。
「杏奈、また辛い事があったらなんでも言って、わかった?」
「は、はいっわかりました!」
今回は私が中々喋らなかったからこれからはちゃんと喋ってって事だよね。
今回の件は本当にすみませんでしたっ
でも、二人ともありがとうございます–––。
「だいぶ落ち着いた?」
「はい……すみません。思いっきり泣いて」
「全然いいよ。全部涙で流せたならそれで」
不知火さんは私が泣いている間ずっと背中をさすってくれていた。
いつの間にかドア付近からベッドに移動していて私の隣に不知火さんが座って落ち着かせようとしてくれてたんだと思う。
「それで、本題に戻るけど深海さんは"いじめ"られてたんだよね」
"いじめ"。そう聞いてやっぱりあれはいじめだったんだと再度認識する。
「はい……」
「いつ頃から始まったとかわかる?」
いじめがいつ頃から始まったのかって事だよね。
「多分なんですけど、私が不知火さんのブレスレットを撮影スタジオに届けに行った次の日からだと思います」
「次の日から……」
あの時、シャッター音がしたほうを探すでもしていたらこんな事にはならなかったのかな。
あの時の事を振り返っているとブレスレットを届けに行った次の日の朝に写真が置かれていた事を思い出した。
「あの、その次の日の朝に私の机に写真が置かれていたんです」
「写真?」
「はい、私が不知火さんにブレスレットを届けている時の写真で私の顔が黒く塗りつぶされていたんですけど……」
「えっ……?」
びっくりしたように声をこぼした不知火さんはこれでもかと目を見開いていた。
「じゃあ杏奈がいじめられるようになったのは俺のせいって事、か……」
「いやっそんな事はないと思います」
きっと前々から私の事が気に入らなかったんだと思う。
……あれ、今、不知火さん……。
「私の事、"杏奈"って呼びましたか?」
前まで"深海さん"じゃなかったっけ……?
「うん。だって、今更苗字で呼ぶとか他人かよって感じがしたからいいかなーって。もしかしてダメだった?」
申し訳なさそうに手を首筋にまわした不知火さん。
ダメっていうか、むしろ……。
「嬉しい、です……」
って私何言ってるの⁉︎
自分でも何を言っているのかわからずどんどん顔が熱くなっていく。
「い、今のは忘れてくださいっ」
勢い余って訳のわからない事を言ってしまいきっと今の私の顔は真っ赤だろう。
「いや、むしろめっちゃ覚えてる。し、杏奈も俺の事は"依桜"でいいよ」
「えっ……」
依桜は不知火さんの下の名前。
私、名前で呼んでもいいの?
不知火さんからそう言ってもらってすごく嬉しかった。
「じゃあ、依桜さんって呼びます……」
「ああ」
今まで不知火さんって呼んでたからなんだか違和感があるなけど嬉しいっ
そう思っていた時、突然ガラガラッと保健室のドアが開いた。
「杏奈ちゃん!」
可愛らしい声で私の名前を呼びながら入ってきたのは姫華さんだった。
「姫華さん⁉︎どうしてここに……?」
「もう杏奈ちゃんが心配で心配で飛んできちゃったよ!」
「えっと、どういう事ですか……?」
姫華さんは私達がここで話をしていた事を知っていたようだけど……。
私は訳が分からず姫華さんの事を見ていると依桜さんが補足してくれた。
「この時間に俺達が話すって事を元々姫華に伝えておいたんだよ」
「そうだったんですか……」
もしかして初めからそのつもりでわたしをここに呼んだのかな?
「それより、どうしたの⁉︎そんなに目真っ赤にして。まさ依桜に泣かされたの?」
じーっと私の顔を見てからびっくりしたように私の顔を両手て挟んでまじまじと見ている姫華さん。
「俺がそんな事するわけねーだろ」
「本当かなー?依桜はいろんな女をたぶらかしてるからなー。もし杏奈ちゃんにも同じような事したら私が怒るんだからね」
「へいへい」
面倒くさそうに返事をした依桜さん。
やっぱり依桜さんと姫華さんは仲がいいんだな。
二人の会話を見ていると喋り方とかからすごく仲がいいんだなという事が見て取れる。
「それより今は杏奈がこれからどうするかだろ」
「これからどうするか、ですか……」
私も現状をどうにかしたいとは思っているけど、誰が私にあんな事をしているのかわからないしどうすればいいかわからない。
みんなが黙り込み保健室に沈黙が流れる。
「あっそうだ!」
シーンとしていた空気を姫華さんの声が吹き飛ばした。
「今度の文化祭で恥かかせてやればいいんだよ!」
「恥、ですか?」
「うん!」
自信満々に言った姫華さんは思いっきり立ち上がってガッツポーズをしていた。
「多分杏奈ちゃんをいじめてる人はきっと何かがあって嫉妬してるんだと思うの」
嫉妬……。それなら思い当たる事がある。
「もしかしたらなんですけど、前私の机に依桜さんとのツーショットの写真が置いてあって、しかも私の顔が黒く塗りつぶされていたんです」
あの写真は気味が悪くてその日のうちに家のゴミ箱に捨ててしまって今はもう持ってはいない。
「多分それだね。依桜はモテるからねー女子が嫉妬するのもおかしくはない」
「やっぱり俺のせいか……」
「あんたのせいじゃないわよ。悪いの杏奈ちゃんをいじめてる人だから」
肩を落としながらシュンっとしてしまった依桜さんの背中を姫華さんがバシンッと叩く。
結構な音がしていたから相当痛かったんだろうなと顔を顰めた依桜さんの表情を見て思った。
「それで、その人は多分SNSとかにストレス発散として悪口を書き込んでたりすると思うから……あっ、 あった!」
少し考えるようにスマホを操作した後、何かを掴んだのかパァーッと顔を明るくさせた姫華さん。
「ねえ杏奈ちゃん、杏奈ちゃんのクラスに愛莉って人いない?」
「愛莉、さん……?」
クラスの人と喋る事ないからそんなに名前とかはわからないけど……あっ愛莉さんってあの愛莉さんかな?
「あの、一人いるんですけど、すごく明るくていつも
二、三人の子と一緒にいます」
「ビンゴかなー。でもまだちゃんとはわからないから直接接触してちょっと喋ってみるね」
「は、はいっ」
すごいっ探偵さんみたい……!
トントン拍子で話が進んでいき、私が全然わからなかったいじめの犯人まで難なくわかってしまった。
「姫華、それでわかったとして文化祭でとか言ってたけどどうするんだよ」
「それはね、毎年文化祭で行われてる"ある人を大変身⁉︎一番上手くプロデュースするのは誰だ⁉︎"っていうコンテストがあるんだけどそれで恥をかかせてやろうと思って」
"ある人を大変身⁉︎一番上手くプロデュースするのは誰だ⁉︎"っていうのが毎年文化祭であるのかな?私は今年が初めてだからわからないけど……。
姫華さんも三年生だから毎年出てるのかな?
なんだかルンルンな姫華さんは楽しそうだった。
「まあ後の事は私に任せて!杏奈ちゃんは大船に乗った気でいてね!」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
やっぱり姫華さんは優しいな……。
「杏奈、また辛い事があったらなんでも言って、わかった?」
「は、はいっわかりました!」
今回は私が中々喋らなかったからこれからはちゃんと喋ってって事だよね。
今回の件は本当にすみませんでしたっ
でも、二人ともありがとうございます–––。



