そんな最低な考えが脳裏を過ぎった、その瞬間




ーバンッッ!!


一瞬、リアルに扉を蹴破られたのではないかと思うような、けたたましい衝撃音が静寂を切り裂いた。




「.....っひ、!?」



な、ななななにごとだ。驚きのあまり情けない声と共に全身が椅子ごと跳ねたのも、心臓がドキリとしたのも、仕方がない、こればかりは条件反射というやつだ。


わけもわからず、びくびくと肩を震わせる俺に構いもせず、すさまじい音を引き連れてすさまじい登場の仕方をした人物は、そのままずかずかと無遠慮に生徒会室を縦断する。
そして俺のもとまで歩み寄ったかと思えば、だん、と机に両手をついた。

しょ、しょるいのやまがゆれてるから...っつ、かかお..ちかいんだが...





「かーいちょ、今からあなたを連行します」


「は...な、にいって...」



なにをいっている。
ここは一般生徒の出入りは禁止だし、俺にはまだ期限に迫られたデスクワークが山のように残されているし、極力外にはでたくないんだ...紙のようなメンタルの今、外にでてまた生徒たちから罵声やらを浴びさせられたら...

きっともう、立ち直れないだろうから



安易に想像できるこの先に、自然と顔が俯く。ぎゅ...と自分の制服の裾を掴む俺を見て、こいつは...この平凡生徒は何を思ったのだろうか。









「まあ無理やりにでも連れて行くんですけど」



なにを思ったのだろうか、ぐいっと俺の腕を掴んで言葉通り無理やり立たせた。動作の途中、ほそ...と呟かれたのでひと睨みしておいた。買うか、喧嘩。




「ちょ、はなせ!俺には仕事が...」


「あのねえ...こんな平凡ごときの腕力も解けないような人がいくら反論したところで、説得力ないですから」



思わず、ぐ..と声が詰まる。
仕方ねえじゃんか、ここ最近は飯食う時間すら惜しいんだから。...そうでもしなきゃ終わらないんだよ、仕事。




「で...でも、」


「でももデモもないです。たまには人間、息抜きも必要ですよ、会長」


「.......」


「無言は肯定と取りますので」



....やっぱり三谷瀬の友人やってるだけはあるな。いい性格してるわ、おまえも。


まあだが、






(....悪くはねえな)