紺碧のアステリズム




百合子(ゆりこ)、桜ちゃん。」



応接室のドアが開く。



「兄さん…!」

「慈郎伯父様!」

「やあ。 久しぶり。」



抱きつきたくのを堪えて、立ち上がり、優雅にお辞儀をしてみせる。



「百合子、元気そうでなによりだよ。 桜ちゃんも、大きくなったね。」



丸眼鏡の向こうで目尻を下げ、穏やかに微笑む伯父。袴を着ると頼りなさを感じる細身ですらりとした容姿も、今のように洋装をすればとても様になる。父や祖母はそんな伯父を頼りないだのなんだのと嫌い、その仕事まで馬鹿にしているが、私は役人として異国の要人を相手に仕事をしている伯父がかっこよくて大好きなのだ。



「兄さんも元気そうでなによりだわ。 そちらの方は?」

「あぁ、彼かい?」



伯父に続いて応接室へ入ってきた人の、その背の高さに驚く。伯父も背が高い方なのに、その伯父よりも背が高く、体つきもしっかりしていたからだ。



「彼はジェームズ。 2人が助けてくれた子の保護者の方だ。」

「コンニチハ。」



海辺で助けた子どもと同じ、あの青の瞳に私が映る。私達は慌てて挨拶をした。



「《慈郎、なぜこの子は私達の挨拶を知っているんだい?》」

「おや、本当だね。 桜ちゃん、カーテシーなんてどこで覚えたんだい?」

「伯父様の本で。」



青い目の男性は嬉しそうに微笑み、手を叩く。そして手を差し出してきた。



「《さすが慈郎の姪っ子だね。 気に入ったよ。 そもそも僕らに友好的な人がいるなんて。 それもまだ若く、美しく、愛らしい人だなんてね。》」



早すぎて何を言っているかはわからないが、伯父が嬉しそうに笑っているので私も合わせて微笑んで置く。



「桜、お礼。 アリガト。 アダム、助かっタ。」



カタコトだけれども、私の国の言葉で感謝を伝えようとする姿に感激を受ける。



「《どういたしまして!》」