紺碧のアステリズム




花選びも残り一週間となった日。その日は校内で逢引きの誘いがあちらこちらで見受けられた。明日は花選び期間中最後のお休みだからだ。



「桜!」



珠子と2人、お昼休みに木陰で休んでいると、今日も懲りずに矢嶋さんが話しかけてきた。とんでもなく失礼な初対面の日から、彼は毎日毎日話しかけては早くも妻扱いしてくるのだ。



「明日はお前の家まで迎えに行ってやるからな。 次は逃げるなよ。」

「私はあなたと明日のお約束なんてしていません。 家に押しかけて来ても困ります。 それに逃げた覚えもありません。」

「恥ずかしがっているのか?」



この人には言葉が通じないのか。いつも一方的で、粗暴で、嫌になる。許可もなくどかりと隣に座り込んだ矢嶋さんは、私が手にしていた本を取り上げてポイと投げ捨ててしまった。



「何するんですか…っ!」



本を拾おうと立ち上がる私の手を力強く掴まれ、私の頭に一気に血が昇る。恋人でも婚約者からでもない…嫌いな人間に触れられたことに対する怒りと気持ち悪さとで、肩が震えた。



「本ばかり読んで何になる?」



女に学は必要ないと祖母達が言うように、彼もそう言いたいのだろう。

本を拾い上げ、珠子の手を引きその場を離れる。けれども彼は追いかけてきて、勝手に話し続けた。



「強情だな。 俺のどこが何がそんなに不満なんだ? おい、聞いてるのか? お前のお父上はこの縁談に前向きみたいだっていうのに。」



そうだろう。正確な返事はしていないようだが、農を生業とする野々宮家としては、商を生業とする矢嶋家との繋がりはあった方がよいと考えているはずだ。