紺碧のアステリズム




「そうか…。」



柊太の表情が暗い。恋人が花選びの対象になった話など、気分が良いものではないだろう。

柊太の手を握り、その目をまっすぐに見つめて言う。



「柊太、私、花選びで例えどんな人が私を選ぼうと、私が好きなのは柊太だけだから……」



だから安心してと言うより先に、柊太は首を横に振る。



「花選びのことは何も心配していないよ。 それよりも、異国の話は今はあまり口にしない方がいいと思う。」

「え?」



花選びは何も心配していない?



「それは…どういうことですか?」



つい語気が強くなってしまう。

花選びについて、何も心配していない?

通常花選びで指名を受けた場合、もしくは教師陣などから相性が良いことが家に知らされたりすれば、縁談はとんとん拍子で進んでいく。柊太と私の関係はただの恋人であり、婚約している訳ではない。それに柊太の身分は……。

私の気持ちに気づかないのか、柊太は続ける。



「最近この街にも軍の人がたくさん来るようになったんだ。 戦争が始まるって噂があるのは知ってる? どうも本当みたいだって言われてるよ。 しかも今度の戦争は、異国の代理戦争だって。 だから、異国の話はしない方がいい。」

「…わかりました。」

「異国に関する本も、控えた方がいいと思うよ。 花選び中は特に、ね。」



花選びで訪れる男子の家は、政治や軍に従事している人が多い。彼らに誤解されようものなら、反政府だと酷い扱いを受ける可能性も少なくない。  

そろそろ店に戻らないとと、立ち上がる柊太を引き留める。



「柊太!」

「ん?」



今、花選びが行われていて、内一人から縁談を持ちかけられている。そう話せば、柊太はどうするだろうか。どう思うだろうか。



「もし…もし私が花選びで誰かに選ばれたら、柊太はどうする?」



柊太は、なんと答えればよいのかわからないのだろうか。しばしの沈黙の後、困った顔で笑った。



「桜が俺を選んでくれるなら、一緒になれるよう、頑張るよ。」



走り行く恋人の後ろ姿に、私は小さな声で呟いた。



「…時間がないのよ。」