久しぶりの街は、少し雰囲気がピリついていた。人気の観劇も空席があり、軍服に身を包む人の姿が多い。何かあったのか聞こうと思えど、珠子はいつも通りの様子で、街の変化に気にしていないようだった。
「あ、柊太君の店よ。」
珠子の家は、この街で手広く商売を広げている。その一つである呉服問屋が、柊太の奉公先だ。
あ……。
大きな何段もある木箱を抱え、裏へ運び出している柊太の姿にとくりと心臓が音を立てる。こうして働く姿を見るのは初めてのことだった。
「私は叔父様と話があるから、桜も少し話しておいでなさいな。」
珠子にぽんと背中を押される。
「しゅ、柊太…!」
押された勢いで柊太に声をかけると、柊太は持っていた木箱を地面に落としてしまった。

