この国では古来より、すべての物に神が宿ると考えられてきた。気導とは、物に宿る神に己の気を送り、神の目を醒まさせ、その力を引き出す力のこと。気導を扱うことができれば、どのような生まれの人間でも、人の上に立つことができる。
父方の祖父は、里では名のしれた使い手で、祖父が刀を握ると、刀の周りを風の渦が巻き付くように生まれ、刀を振り下ろした風圧だけで巨木を倒していた。家宝として代々家長が受け継いできた刀は今父の腰に差されており、父はそれを弟へ渡そうとしている。
なぜ長子の私ではないのか。それは気導を扱えるのは男だけだからである。
私は忘れもしない、祖父が大怪我を負った日のことを思い出す。男しか使えないなんて、何かの間違いだ。私にも使えるはずだと、祖父の刀をこっそり握ったあの日のことを。あの日祖父は、私のせいで腕を上手く動かせなくなるほどの怪我を負ってしまったのだ。
「気導は物に宿る神へ自分の気を捧げることで、その力を引き出して使う力だよね。 でも、彼らの魔導は少し違うようなんだ。」
伯父様の声にハッと我に返る。
「桜ちゃん? どうしたのかな? まだ本調子じゃない?」
「いえ…! 続きをお願いします!」
ジェームズさんの説明を、伯父様は噛み砕いてわかりやすく説明してくれた。
魔導と気導は、どちらも己に宿る気を使う点は同じであるが、魔導では、自然に宿る精霊という存在に己の希望を叶えるに必要な量の気を捧げ、叶えてもらう力だという。難しい希望であればあるほど、捧げる気の力は大きくなければいけならないという一方で、気導のように注ぎ続ける必要はないという。ただ、イメージが非常に大切だと言う。
「《桜ちゃんは何色が好きかい?》」
「《桃色です。》」
そう答えた瞬間、青色の炎が素早く桃色の炎に生まれ変わった。
「えっ!?」
「凄いでしょう? 僕も初めて見た時は驚いたものです。」
まるで自分のことのように誇らしげに胸を張る伯父様。
桃色の炎は手のひらに乗る大きさのまま、兎の形になり、私の手元まで跳びはねてきて、手のひらに触れようとした直前で消えた。
「《桜の目と口、ぽかんとしてるぞ。》」
驚きのあまりに言葉を失っている私を、アダム君はケタケタと笑い飛ばした。

