「どうしてこんなことに…。」
「《まだ駄々をこねてるのか。》」
隣で大きく溜め息をつくラキアスを睨む。
「今のもわかりましたよ!? 少しは励ましてほしいです!」
結局アダム君の推しに負けて、私は帰りの遅い私を心配して来た母を巻き添えにして宿舎へ泊まることになった。しかしその母は、一番初めに意気揚々と肝試しに出かけ、泣いて帰って来たアダム君の寝かしつけに行ってしまって…
「次はラキアス君と桜ちゃんの番だね。」
一緒に肝試しをする相手は、母から余っていたラキアスに変わってしまったのだ。
「伯父様! 本当に変な仕掛けを置いたりしていませんよね!?」
「大丈夫だよ。 危ないものはないし、ちゃんとラキアス君が守ってくれるから。 ね?」
何も答えてくれないラキアスに、不安は募るばかりだった。私は仕方なく、ラキアスと2人、裏の林に足を踏み入れる。まだ夜も始まったばかりだが、手入れの行き届いていない林は暗く、不気味な雰囲気を放っている。
こんな時、柊太がいてくれたらっ…!
「《おいっ、服を引っ張るなよ。》」
「このくらい、いいじゃないですか…!」
怖いんだから!と言ったそばから、視界の右端に、見てはいけないものをとらえる。
「ラ、ララララキアスあそこ…!」
見て!と差した先に見えたのは、青い光を放ちながら揺れ動く火の玉だった。火の玉はしばらくしてすっと消える。
「み、見ました…!? ラキアスも見ましたよね…!?」
「《見たけど、あれはジェームズが魔導でそれっぽく……》」
「は、早く行きましょう!」
「《お、おい、引っ張るなよ。》」
頭の中では理解しているつもりだった。物の怪はいないと。迷信だと。けれど先程見たのは紛れもなく火の玉だった。
頭の中がぐるぐる回っているような感覚に気持ち悪さを覚える。そこへとどめをさすように、足下をひやりとした風が流れ、間もなくべちゃりと何かが足に塗りたぐられた。
「キャアアアッ!!!?」
血の気が引くとは、まさにこういうことを言うのだろう。視界がぐらりと揺れる。
「《桜!?》」
よろけたところを支えようとしたラキアスごと、地面に倒れ込む。
「《ふぅ、ナイスキャッチ。 も〜。 ジェームズおじさん、やり過ぎだよ〜。》」
え?
遠のく意識の中、こちらを心配そうに覗き込むラキアスを見てあることに気づく。
目が… ラキアスの目が、この前の夜に見た色と違う。
「《あなた… 誰なの?》」
目を見開くラキアス。しかし私は、ラキアスから答えを聞く前に、意識を手放してしまった。

