紺碧のアステリズム




「《桜〜! 肝試ししよう!》」



今のは、どんなに異国語ができない私でも理解できた。
 


「き、肝試し…?」



宿舎に戻ってまた遊んで。もう日が暮れるから、その前に帰ろうとしたところで、アダム君に引き留められた。アダム君はとても可愛い顔でこちらを見つめている。



「《アズマの夏は、子どもはみんなするものだって聞いたぞ。 でも、僕たちはそれまでここにはいられないし…。 だから、その前にしたいんだ。》」

「面白そうですね。」



伯父がわあっと手を叩く。



「桜ちゃんさえよければ、こちらで泊まっていくのはどうでしょう! そうですね…どうせ肝試しをするなら、これから物の怪についてお話を聞かせましょう!」

「伯父様!?」

「《今、物の怪という言葉が聞こえたのですが…! 一体何の話をしているのですか?》」



聞き役に徹することの多いジェームズさんが、珍しく会話に食い気味に参加してくる。



「《おや? 桜を見送りに来たのですが…何かするのですか?》」



自室に籠もるラキアスについていたレナードさんまで現れたことによって、話はどんどん大きくなっていく。



「《怖い! ダメ! 私、できない!》」

「せっかくですからみんなでしましょう、桜ちゃん! 怖いならラキアス君かレナード君といるといいと思いますよ。 場所も、夜は彼らに外出を勧められませんから、この宿舎になりますし。」

「《裏の林が良いのではないでしょうか? ここはもともと廃寺ですし、雰囲気も合うでしょう。 魔導でぜひともお手伝いをさせてください。》」

「《なんと! ジェームズの協力があれば、本格的に子ども達を楽しませてあげられると思います!》」



いつになくはりきる伯父を見て、私は母から聞いた昔話を思い出した。夏になると伯父は友人達と、変な音を出したり、火の玉を再現しようとしたりして、人をよく驚かせていたと。あとでバレて怒られる伯父に、どうしてそんなことをするのかと聞けば、怪奇現象は本当に物の怪達が起こしたことなのか。はたまた人間の仕業なのか。それを確かめるためにしている実験遊びだと答えたらしい。

大人になり、さらに知識を蓄えた伯父が企画する肝試しなんて冗談じゃない。

そろっと抜け出そうとすると、



「《桜、帰っちゃうのか…?》」



母性をくすぐる、寂しそうな、可愛らしい声に引き留められた。