「サークーラ! 《今日は何して遊ぶ?》」
「《おはよう、アダム君。》 今日はまた一段と早いね〜。」
「《おお? 今褒められたのかな!?》」
「《さて、どうだろうな?》」
彼らと知り合って3日目。私に懐いてくれたのか、アダム君はあれから毎朝私を訪ねに、護衛のレナードさんを引き連れて家まで来ていた。
「桜、玄関前で待たせないで、入ってもらいなさい。」
母に促され、2人を家にあげる。大喜びで慣れたように、跳びはねて入ってくるアダム君に続いて、申し訳なさそうに入ってくるレナードさん。
レナードさんも大変そう…。
お疲れ様ですの意味もこめて会釈をする。聞けばレナードさんは、私より3つほど年上らしい。レナードさんは大人びていてしっかりしているから、まさかそんなに歳が近いとは思わなかった。
ラキアスもそうだ。大人びているけれど、歳は私と変わらないと言う。それにはラキアスも驚いていた。
少しずつだが三人と仲を深めてきた私は、歳も近いため、遊ぶ中で名前で呼び合う仲になっていた。また、それ故か意思疎通も簡単になってきた。それでも身振り手振りに頼らなければ伝わらないのだが。
「《桜の爺様、婆様、おはよう! 邪魔をするぞ!》」
「あらまぁ、アダムちゃんだわ。 今日も可愛いわねぇ。 おじいさん、見てください。 まるでお人形さんのようだわ。」
「んん。」
朝ご飯の支度が整うのを待っていた祖父母が、まるで孫のようにアダム君を迎えて間に座らせている。
「《朝ご飯、食べる? 一緒に。》」
「《ご飯!? 桜が作ったのか!? 食べる!》」
「《我々のことはお構いなく。》」
嬉しそうなアダム君だけに朝ご飯を上げるわけにもいかないので、2人分追加でご飯をよそう。
「カタジケナイ。」
そう言いながら受け取った割に、レナードさんは白いご飯に目を輝かせる。
「ふふっ! レナードさんったら、そんな言葉、どこで覚えてきたんですか?」
「そうね。 さあ、いただきましょう。」
母も揃ったところで手を合わせる。
「「「「「「いただきます。」」」」」」
アダム君を中心に、会話の弾む朝食会が始まった。まだまだ箸も満足に使えない人もいるところで、礼儀がなんだのと説く人はここには誰もいない。そんな食事は初めてで、楽しくて仕方がなかった。家では黙って食べなければならず、また父や弟のおかわりなどの要望を優先させて動かなければならいため、食事を楽しむなど考えたこともなかった。
「《はーやーくー! 遊びに行こうよー! 桜ー!》」
綺麗に食べ終えたアダム君は、今度は私を遊びに行こうと急かす。
「《待って。》 まだ後片付けが……」
「ここは私がしておくからいいわ。 今の時間なら浜は人目につくから避けなさいね。 いい? まずは兄さんを……」
「わかってます 宿舎以外はどこへ行くにも伯父様と一緒、でしょう?」
心配そうな母に礼を言い、手を振る。
「行商人が来ているらしいから、市と近くの神社へ行こうと伯父様と計画しているの。 夕餉の準備には間に合うように帰ってきます。」
「はいわかりました。 くれぐれも気をつけなさいね。」
「はーい。」
アダム君と手を繋ぎ、宿舎へと向かう。その背中を、母が涙を堪えて見送っていたと知るのは、まだまだ先のこと。

