繁華街の目立つ場所で喧嘩を吹っ掛けてきた馬鹿をどうやら千佳と椿が制圧したらしい。


その千佳たちを迎えに来た俺と翡翠。


ただの喧嘩が、いつの間にか七代目を一目見ようと集まった観客たちに変わり、周りを囲まれる。


内心で舌打ちをする俺とは反対に、翡翠は涼しい顔で車内に流れる音楽に身を揺らしている。



「どうした?翔真」



じっと見ている俺に気付いて小首を傾げた翡翠が、智哉にもらった棒付きの飴を差し出してくる。


……間接キスなんて思ってねえんだろうな。


はあ。とため息を吐いて翡翠の手ごとかぶりつけば、ぱちぱちと目を瞬く黒目には純粋な色だけが映っている。


二回、キスしたのに……こいつなにも意識してねえのかよ。


なんだかムカついてきて、その赤く色付く唇にかぶりつくように唇を重ねれば至近距離で驚いたように目を見開く黒い瞳が見える。