たとえアイツがどれだけ強くても、
「アイツは女なんだよ…!」
どう足掻いてもそれは変わらない。
もしも、喧嘩を挑んで負けたらどうする?
もしも、取り返しのつかない傷を負ったらどうする?
あんな性格だけど、アイツは幼馴染の贔屓目なしにしても美人だから。
「………っくそ!」
「っ、」
椿の胸ぐらを掴んで、吐き捨てるように手を離す。
今はこんなことをしている場合じゃない。
わかってる。
わかってるけど、込み上げた怒りに拳が震える。
「……翔真…!」
突き放すように胸ぐらを掴んでいた手を離して、舌打ちを落とす。
扉を乱暴に開けて飛び出すように走り出すと、背を誰かの声が追ってくる。
「待て!翔真!」
そんなことに耳を貸す暇はないほど、頭に血が上っていた。
バイクに跨り、ヘルメットを被る時間すら惜しいほど焦っていた。
「翡翠……!」
どうか、無事であってくれ……!
【翔真side END】
