「怪我してんじゃん」
「……」
「うわ、痛そう」


顔を覗き込むなりそう言って端正な顔を歪めた男。

彼に言われて、そういえば頬を殴られたんだったと思い出す。


思い出した途端、痛みが襲ってきて思わず顔を顰めると、

「手当してあげようか?」

至近距離で柔らかな茶色の瞳と目が合う。


「……っ、」
「おっと」



必要ない。

────そう言おうとしてぐらり、と揺れる体。


ハッと気づいた時には、抱きしめられるようにわたしは彼に支えられていた。


「もしかして熱あんの?」
「っ」
「うわ、あっつ。こんな状態で何してたのお前」


目眩がしてうまく一人で立つことさえできないわたしを支えたまま器用に額に触れて眉を顰めた。