歴代最強のオヒメサマ

「……智哉、鼻血が」
「んふ。いいのよ、これは生理現象だから」
「せいりげんしょう……?」


本気で心配する翡翠さんに、なに馬鹿なこと教えてんだか。


ふざけてはいても頭の中では葛藤しているんだろう。



理人さん───総長に言うか、言わないか。

誰も怪我をしたわけでもないし、むしろ難なく撃退しているとはいえ、代替わり前のこの時期に余計な揉め事を増やすのは、智哉も本意じゃないだろう。


もしかしたら事が悪化すれば、解決せず七代目に引き継いだとして六代目の汚点になるかもしれない……と。



───それでいい。


黙っていてくれれば、こちらも……なにより、翡翠さんが好きに動ける。


「…………わかったわ、」
「智哉?」
「誰にも言わないわよ。こんな可愛くおねだりされたらもう言えないっての」


肩を竦めた智哉に、なんだか納得のいってなさそうな顔をした翡翠さんがこちらを振り向く。