「…………お前、それどういう意味かわかってんのかよ」


ぼそりと呟くような声に聞こえなくて首を傾げると、繋がっている手とは反対の手でガシガシと頭をかいて、


「……もう、避けねえから」


熱を持ったような瞳と目が合う。

心底ほっとして、情けなくもへにょりと眉が下がる。


安心したと同時に、体がベッドに吸い込まれていく。

急に倒れ込んだわたしに驚いたような顔をしたのは一瞬で、翔真も眉を下げて見たことの無い表情をした。


「ゆっくり寝てろよ。これからは俺も傍にいるから」
「……ほんとう?」
「あぁ」
「……」
「嘘じゃねえって。ちゃんといるから」
「……なら、いい」


わたしに布団をかけた翔真が、ふっと瞳をゆるめる。

まぶたの上に置かれた手の温度に導かれるように、ゆっくりと意識が落ちていく。



「───おやすみ、翡翠」


最後に聞こえたその声は、ひどく穏やかなものに思えた。