「………俺、お前の姫だって噂流されてるみてえなんだけど」



珍しくふたりきりの部屋でそう呟いた翔真に思わずぽかんと間抜け面を晒す。


「ひめ?」
「ああ」


まじまじとその目を覗き込んでも、嘘なんて見つからず、至極真剣だと伝わってくる。


「へえ。いいんじゃない」
「………勘弁しろよ……」



どこか項垂れるようにそう言った翔真の銀髪を撫でる。

珍しく大人しくされるがままの翔真にどこか気分良くなりながら少し硬いその髪に触れる。


「わたしの大事な人って意味には変わらないし、それが姫と表現するならそういうことなんだろうな」

「……威厳がねえ」
「威厳?」
「ああ」



神妙に頷く翔真にピタリと撫でる手が止まる。


「……確かに組織にはそういう人も大事かもしれない。でも水月にはいなくてもいいんじゃないか」


顔を上げた翔真と目が合う。


「仲間ってだけで十分だろ」




誰かが間違えれば誰かが直す。

一緒に成長できる仲間とだからこそ見えるものがある。

それをわたしは理人やみんなから教わったから。




「わたしの姫はおまえだけだよ」



これから先また新しい仲間と出会うかもしれない。
もしかしたら、姫にふさわしい子が出てるかもしれない。