「椿ってば過激派だねぇ」
「当たり前です。翡翠さんに関わることなら俺が出てくると思っててください」


「───わたしがどうしたって?」



翡翠が不思議そうな顔で出てきたかと思うと、きょろきょろと視線をさまよわせて俺を見つけて、その顔をふにゃりとほぐす。



………くそ、かわいいかよ。




「翔真」



駆け寄ってくる翡翠に緩みそうな顔を必死で抑える。

くそ、こんなところでだらしねえ顔なんて晒してたまるか。


ニヤニヤした千佳の視線から逃れるように翡翠を見つめれば、柔らかそうな桃色の唇に無意識に視線がいく。


………ん?




そう言えば、俺、あの日キスしたな……?

うん、したわ。



見てたって、お姫様抱っこ云々じゃなくてもしかしてキスのところじゃねえか?


そう気付いた途端、慌てて振り返るも、



「………おい、ちょっと待て──!」


いつの間にかアイツらは居なくなっていた。



「……どうしたんだ?翔真」
「…………いや、なんでもねえよ」


首を傾げる翡翠の頭を撫でて、勝手に広まるであろう噂を想像してため息を吐いた。




【翔真side END】