交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「それに、俺は何度もお前の字を見てきた。その癖もな」

高城さんと木谷さんは幼馴染だと言っていた。ファックスに書かれていた文字を見て、彼はすぐに木谷さんだとわかったらしい。

「お前はだからいつも詰めが甘いと言われるんだ。浅見屋を立ち退かせようとしたのも、どうせ自分の勝手な判断だったんだろう?」

「黙れ」

「父親である社長に認めてもらいたくて実績を残そうとしたのはわかるが……そんなやり方じゃ、誰も褒めてはくれないぞ」

一気に畳み掛けるように言われて木谷さんがついに怒鳴り散らした。

「うるさい! 偉そうに、お前のそういう上からな態度がいつも気に食わなかったんだ! 俺を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

押さえつけるような震える声、それが怒りからなのか恐怖からなのか窺い知れないけれど、今の木谷さんに何を言ってもきっと響かないだろう。そのときだった。

「おまわりさん! こっちです。あそこ」

言い争っている声を聞き、不審に思った近所の人か、通りがかりの人が通報してくれたようだ。けたたましいサイレンの音とともに数人の警察官が木谷さんを取り囲む。

「な、なんだよ!」

制服の警察官が彼の腕をしっかりと掴む。私はその場で事情聴取され、ここ最近の嫌がらせのことも併せて木谷さんがうちに放火しようとしていたところを目撃したと伝えた。

「木谷さ……」

項垂れ、警察官に連行されて行く木谷さんの背中に声をかけようとして止まった。そこには〝なにもかも終わった……〟と語られているようだった。