交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「それで高城家からお前が引き取られたこの浅見屋の経済的な支援と、お前の教育費も含めた生活全般の支援を受けていたんだ」

祖父は小さく息を吐いたあと、小さく笑った。その表情にも、まだ少しだけ気まずさが残っていた。

「特に湊さんはお前のことをずっと気にかけてくれて、何度か店に様子を見に来たこともあったんだよ」

「え……」

私の頭の中で大切にしていたネクタイピンのことがよぎった。スタイリッシュなデザインで真鍮の綺麗なネクタイピン。そしてそれを拾ったときのことがフラッシュバックした。

あしなが王子だと思っていた人物はやっぱりこのネクタイピンを落とした人だった。そして微かに記憶に残っていたその人と祖父が交わしていた会話が呼び起こされる。

『小春さんは、どんな様子ですか?』

『まだ落ちこんではいるようですけど……それでも金銭的なことはなに不自由なくしてやれてます。ありがとうございます』

『いえ。このくらいしかできないのが逆に申し訳ないくらいです』

ネクタイピンを落としていったとき、咄嗟に声をかけたけれどその人の姿は、逆光に包まれていた。顔は見えず、輪郭だけが光の中ににじんでいたのを今でも覚えている。そして祖父の話を聞いた今、その影が高城さんの姿と重なった。

あしなが王子は、高城さんだったのね……。