交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

大きくため息をついてテーブルに突っ伏したときだった。玄関から高城さんが帰宅する気配がした。

「おかえりなさい」

高城さんは気だるそうにネクタイをほどき、それでも何とか私に笑顔で「ただいま」と答えてくれた。きっと無理しているんだ。ほんの少し目の下にクマができているような気がする。ちゃんと眠れているのかな? そう思ったら、ますます嫌がらせの話なんてできない。

「小春。毎日遅くなってすまない、仕事を言い訳にはしたくないんだが……ん?」

ジャケットを脱いだ彼が私をギュッと抱きしめる。その視線の向こうにあるテーブルの上の紙に気づいたのか、高城さんの眉がピクリとした。

「これは?」

テーブルの上にくしゃくしゃになった紙が置かれているのに違和感があったのだろう。

「あ、それは……」

なんでもないです。とそれを掴んで後ろに隠す間もなく、高城さんがファックス用紙を手に取った。するとみるみるうちに眉間には小さな皺が寄り、唇は一文字に結ばれ、顎の筋肉が固くなっているのがわかった。

「これは、浅見屋のことを言っているのか?」

目元がいつもより鋭く、瞼の開きがわずかに狭まっている。ただ真っ直ぐ冷静に怒っているという事実が空気よりも重くのしかかってくる。