以前からここの土地一体に新しくホテルを建設する計画を木谷さんから聞かされていた。そして彼は何度もその件で店に来ては追い返されを繰り返している。
本格的に……って? 計画がどんどん進んで話が固まってきてるってこと?
祖父のご機嫌を取ろうと大口で商品を注文したり、取引先にうちの店を紹介したりと手の込んだことを色々やって入るけれど、祖父にとったら仕事は仕事だと見え透いた木谷さんの下心は無視しているようだ。
浅見屋の周辺は空き家が多く、解体する費用を出してくれるなら土地を明け渡してもかまわないという所有者が多く、そんな中にある浅見屋は一緒に声をあげて立ち退きを反対してくれるような仲間もいない。木谷さんも浅見屋が今にも潰れそうな古ぼけた店だから立ち退いたって問題ないだろうと思っているのだろう。
立ち退きだなんて、そんな勝手なことさせないんだから。
木谷さんは木谷ホステルグループ創業者の孫で三十二歳。都会育ちのお坊ちゃんというような垢抜けた感じでいかにもモテそうな雰囲気だ。店に来ると必ず私にも話しかけてきて気遣ってくれているようだけれど、無遠慮に近づいては距離を狭めようとしてくるのが苦手だった。海外に留学していたこともあるとか言っていたからそのフランクな所作は癖づいているものなのだろう。
「おじいちゃん、木谷さんからほかに何を言われたの?」
何度も何度もため息をついて、いつまでも気持ちを切り替えられない祖父は珍しい。いつもなら「うじうじ考えていても仕方ねぇ!」って吹っ切るはずなのに。
「ホテルで販売してるうちの商品の注文、来月からやめるってさ」
「えっ、そ、そんな!」
本格的に……って? 計画がどんどん進んで話が固まってきてるってこと?
祖父のご機嫌を取ろうと大口で商品を注文したり、取引先にうちの店を紹介したりと手の込んだことを色々やって入るけれど、祖父にとったら仕事は仕事だと見え透いた木谷さんの下心は無視しているようだ。
浅見屋の周辺は空き家が多く、解体する費用を出してくれるなら土地を明け渡してもかまわないという所有者が多く、そんな中にある浅見屋は一緒に声をあげて立ち退きを反対してくれるような仲間もいない。木谷さんも浅見屋が今にも潰れそうな古ぼけた店だから立ち退いたって問題ないだろうと思っているのだろう。
立ち退きだなんて、そんな勝手なことさせないんだから。
木谷さんは木谷ホステルグループ創業者の孫で三十二歳。都会育ちのお坊ちゃんというような垢抜けた感じでいかにもモテそうな雰囲気だ。店に来ると必ず私にも話しかけてきて気遣ってくれているようだけれど、無遠慮に近づいては距離を狭めようとしてくるのが苦手だった。海外に留学していたこともあるとか言っていたからそのフランクな所作は癖づいているものなのだろう。
「おじいちゃん、木谷さんからほかに何を言われたの?」
何度も何度もため息をついて、いつまでも気持ちを切り替えられない祖父は珍しい。いつもなら「うじうじ考えていても仕方ねぇ!」って吹っ切るはずなのに。
「ホテルで販売してるうちの商品の注文、来月からやめるってさ」
「えっ、そ、そんな!」



