交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「それにしても、高城さん、きっと小春に甘々なんだろうなぁ、夫婦生活どんな感じなの?」

テーブルに両肘をついて組んだ両手に顎をのせ、芽衣が意味深にふふっと笑った。

「どんな感じって……」

木谷さんに高城さんを私の夫として紹介した日の夜。私は初めて彼とキスをした。でも、ただそれだけだ。

「えっと……」

「あ、ごめんごめん、野暮なこと聞いちゃったね」

芽衣の質問にどう返そうか言葉に詰まっていたら、芽衣が引き下がってくれたからよかったものの、改めて考えたら私と高城さん、夫婦だけど色めき立った触れ合いはない。

「あとさ、余計なことかもしれないけれど、木谷には注意したほうがいいよ」

「え?」

「ホテル業界では有名だよ、木谷ホステルの孫の出来損ないぶりは。しつこいし、根に持つタイプみたいだから」

確かに立ち退きの話をするのに浅見屋に何度も来ては追い払われ、それでもめげずに性懲りもなく祖父と話をつけようとしていた。高城さんにけん制されて、あのときは引き上げていったけれど、実はそう見えていて裏で何をしてくるかわからない。そう思ったらだんだん怖くなってきた。

「教えてくれてありがとう、高城さんにもそう伝えておくね」

芽衣の言葉を胸に刻んで、私はビールを呷った。