交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「ええっ⁉ ち、ちょっと! その話、詳しく聞かせて!」

放心状態から我に返った芽衣がグイッと食いつかんばかりの勢いで前のめりになる。とりわけ芽衣はこの手の話が大好物で、苦笑いする私をよそに目をらんらんとさせていた。なんて説明したらいいか考えるけれど、ただ高城さんが私に一目惚れしたからなんて言ったって信じてくれないだろう。

芽衣にはちゃんと言おう。

パーティーで気分が悪くなり、気が付いたらスイートルームにいた。あのとき、心配して芽衣から電話がかかってきたけれど、混乱していた頭で『先に帰った』と口を突いて出た嘘を彼女に謝罪し、本当のことを話した。

「そっかぁ、浅見屋も大変なんだね」

ポイッと軟骨揚げを口に放ると芽衣がうんうんと頷いた。

「交際0日婚なんてなんだかロマンチックじゃない、高城さんが一目惚れするタイプだったなんてね、知らなかったわ」

芽衣は高城クラウンホテルズ銀座のレセプショニストとして働いている。少なからず私より高城さんのことを知っているだけに感慨深いものがあったようだ。それに木谷さんとの結婚を回避するため、浅見屋の立ち退きを白紙にするため、嘘でも恋人になってくれたら……という打算的な気持ちがあったことも私を責めることなく、「それも出会いのうちだよ」と笑ってくれた。その言葉に救われるような思いで私もつられて微笑んだ。