交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

週が明けて数日後。

開店時間の十時とともに浅見屋のシャッターを上げ、今日も頑張るぞ! と気合いを入れた。カレンダーを見て今日の日付を見ると小さい文字で「豆大福十個 佐々木さん」と書かれているのに気づく。佐々木さんはうちの店の常連で、お茶の先生をしている。毎回お茶菓子としていつも多めに大福やきんつばなどを予約してくれる大事なお客様だ。

今日の豆大福、おじいちゃん忘れてないよね?

私は店の台帳をぱらぱらとめくり、今日の日付に予約の品が記載があるか確認する。

あ、なにも書いてない!

祖父は年のせいか、たまに予約を忘れることがある。だから私が朝一番に今日の予約商品の有無をチェックするのだ。

もー、あれだけ言ったのに。午後に取りに来るお客様だからまだ間に合うね。危ない危ない、よかった確認して。祖母が予約を受けると、電話をしながらそのままカレンダーに注文を書き込む。後で台帳にも書いてくれればいいのだけれど、それをいつも忘れてしまうのだ。そして祖父はカレンダーはあまり見ず、台帳のほうを確認するので時々こういうことが起こる。

私は祖父にそのことを伝えようと厨房へ向かった。

「おじいちゃ――」

「はい、え! 立ち退きの話、なくなったんですか?」

暖簾をあげて厨房に入ろうとしたときだった。祖父が中で誰かと電話をしているようで、耳に飛び込んできた祖父の言葉に足が止まった。

「そうでしたか、本当にありがとうございました。ホッとしました」

立ち退きの話がなくなったって……ええっ⁉