交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

まだ誰とも付き合った経験がないなんて、友人に言ったらきっと笑われる。だからずっと秘密にしてきたけれど、高城さんには本当のことを知っていて欲しくて嘘をついたり誤魔化したりなどしなかった。恥ずかしさで頬に熱がこもる。そんな私を見て彼の瞳は穏やかに細まり、口元にやわらかな笑みが浮かんだ。

「そうか、ごめん、でも、なんか嬉しい」

 言葉は静かだったけれど、その声には喜びじみたものが滲んでいた。彼がまるで宝石を手に取るように、そっと私の手を包み込む。

「小春」

彼のしっとりとした落ち着いた声音で自分の名前を呼ばれると、ぞわぞわっとした感覚が走る。次にその手が私の腕を伝ってそっと私の頬をすくう。見上げると、やわらかく、けれどまっすぐな瞳があった。熱が指先から静かに伝わってくる。

「高城さん……」

私が名前を呼ぶと彼が小さく息を飲んで目を逸らした。

その瞳に浮かぶのは拒絶なんかじゃない。むしろ、何かを必死に抑え込んでいる色に思えた。

心臓が痛いくらいに高鳴る。ほんの数秒の沈黙がやたらと長く感じた。

も、もしかして……私、このまま高城さんと――。

男の人と一線を越えるどころかキスすらしたことがなかったというのに、この場で一気に事が進んでしまうのか、そうだとしたらまだ心の準備ができていない、気がする。嫌じゃない。嫌いなわけじゃない。でも、まだどこかで怖がっている自分がいる。

「あ、あの、私っ」