交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

どうしたのかな? 今度は難しい顔して考え込んでるような……?

「高城さん?」

「あ、ああ、すまない少し考え事をしていた。気にしないで欲しい」

ハッとして高城さんは慌てて笑顔になって「なんでもないよ」と首を振った。

きっと、ネクタイピンをネックレスにするなんて変わったことするなって思われちゃったのかも?

「そろそろ帰ろうか、時間ももう遅い」

彼の指先が私の髪に触れ、そっと耳にかかった束を直す。その距離に鼓動がひどく騒ぎ出す。

「そうですね」

高城さんにそっと背中を押し出すように部屋を出る。まだまだこの素敵なお店にいて彼と一緒にいたい。

高城さんも同じ気持ちだったらいいな。

私は隣で一緒に歩いている高城さんの顔を人知れずそっと覗き見た。

「ん? どうした?」

私の視線に気づいた高城さんがにこりと笑う。

「今夜はありがとうございました。とても美味しかったし、楽しい時間を過ごせました。また明日から頑張れそうです」

「それは良かった。俺も同じだよ。それに時間が許してくれるならもっと君と色んな話をして、ずっと一緒にいたい」

誰もいないエレベーターホールで彼の温かな手がそっと私の手を包み込んだ。指先がじんわりと溶けていくみたいに、やさしい熱が伝わる。

あぁ、彼も私と同じ気持ちでいてくれた。嬉しい。

そんな思いを伝えるように、私は高城さんの手をギュッと握り返した。