交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「あ……い、いえ、そんなことは……」

「大丈夫だ。悪いようにはならないから」

そう言って今度は私の腰に回した腕でギュッと後ろから抱きすくめた。甘く痺れた感覚がジンと身体に走る。彼の声は夜景に溶けるように優しかった。

この香り……。

高城さんのマンションに越してきてから部屋のところどころから微かに爽やかな清潔感のある香りがしていた。心が落ち着くような安心できるような、そんな匂いだ。抱きしめられ、この香りの元が彼の香水だったことが今わかり、私は高城さんを感じたくて胸いっぱいに吸い込んだ。彼の存在が何よりもあたたかい。

「きっと木谷さん、私の旦那様が高城さんだって知ったらわかってくれると思います。店の立ち退きも諦めてくれるんじゃないかなって、実際そんなうまくいくかわかりませんけど」

「器が狭いと思われるかもしれないが、本当はこの絶景にあいつのホテルが見えるっていうだけで嫌気がさすんだ」

少し拗ねたような表情が垣間見えて私は思わず微笑んだ。

「ふふ、でもあの変わった形の建物がその絶景を引き立たせてるのかもしれませんよ?」

そう言って私はハッとする。