交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「大丈夫か?」

「はい、すみません」

穴があったら入りたい。恥ずかしすぎる……。

高城さんが軽く手を挙げると、それをさっしたウェイトレスが代わりのカトラリーを持ってきてくれた。

「ありがとうございます」

「もしかして結婚生活でなにか不自由していることがあるとか? 足りないものがあるならすぐに用意するからなんでも言ってくれ」

「いえ、そうじゃないんです。実は――」

高城さんとの結婚生活はこれ以上の贅沢はないくらいに充実している。足りないもので強いていうなら彼と一緒に過ごす時間くらいだ。
私は今日、浅見屋に木谷さんが来て会って欲しい人がいる。場所を指定されて木谷ホステル銀座店の一階ロビーで待ち合わせすることになった。と、高城さんになんの相談もなく決まってしまったことを申し訳なく思いながらぽつぽつ話すと、高城さんは表情ひとつ変えずに「わかった」とひとつ返事で了承した。

「木谷ホステルか、久しぶりだな」

デザートのガトーショコラが運ばれてきて、高城さんがフォークを手に取る。いきなり決まったことだというのに困惑もせず、彼は堂々としていた。

「ごめんなさい、木谷さんが勝手に日程と場所を決めてしまって……」

「ああ、いいんだ、あいつはそういう男だ」

全然気にしていない。というふうに高城さんが笑みを浮かべる。

「あの、木谷さんとお知り合いなんですか?」

「知り合いといえば知り合い、だな。小学生のときからの」