交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

フレンチレストランシェ・リは、最上階なだけあってガラス張りの窓から幻想的にライトアップされた街の夜景が一望できる。天井にはきらびやかなシャンデリア、床には高級感漂うコバルトブルーの絨毯が敷かれていて、ところどころに配置されているセパレーション代わりの観葉植物が緊張感を和らげてくれる。

――十九時。

平日の夜だけれど、数組のお客さんが入っていて客層もどことなくハイソな雰囲気を持った人たちばかりだった。店内では生演奏のピアノの音色が響いている。

「素敵なお店ですね、私、ちゃんと見合った格好してるか……」

個室に通されて椅子に座るとホッとひと息つく。

特にドレスコードは気にしなくてもいいって言われたけど、こんな高級なレストランだったらさすがにジーンズなんて履いてきたら怒られそう。

お出かけ用で滅多に着ないけれど、淡いパステルピンクのワンピースにパールのピアスを着けて、髪の毛も少しヘアアイロンで巻いてきた。そんな私を見て、高城さんが「綺麗だよ」と微笑んでくれた。

一見、完璧! と思う装いだったけれど、ネックレスをしてくるのをうっかり忘れてしまった。いつもはお守りにしているネクタイピンのネックレスもチェーンが切れてまだ修理していない。無残にも引きちぎられてしまったネックレスを見ると悲しくなって涙が出そうになった。

なんとなく心もとない胸元を私は指でさっとなぞった。

「すまない、仕事が終わってこの時間の予約じゃ忙しなかっただろう」

「いいえ、そんなことないです」

仕事が終わり、いったんマンションに帰ってから身支度を整え、バタバタしているうちに高城さんが秘書の運転で迎えに来てくれた。