交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

かくいう祖父母も結婚するとき、それまでお互い顔も知らなかった。ちょっと古臭いかもしれないけれど、こういう出会いも慎重になりすぎるより勢いがあっていいんじゃないか、なんて仲のいい祖父母を見ていると思えてくる。

それに、もしこれが嘘だったとしてもなんとか木谷さんには紹介できる。なんだか祖父母を騙しているような気にもなるけれど、浅見屋の存続の危機という大きな問題を抱えている以上、背に腹は代えられない。

『俺が店も、君のことも守る』

頼もしい彼の言葉が脳裏によみがえる。あんなふうに「守る」なんて今までそんなふうに言ってくれた人なんていなかった。彼の心地よい低音の声も相まって思い出すと、ボッと頬に熱を持つ。

「それでお相手の方が高城クラウンホテルズの高城湊さんって、本当なの?」

「え、あ、うん、そうなんだ」

「こう言っちゃなんだが……高城クラウンホテルズとタイアップできるならうちも安泰だ。それに小春の旦那が高城さんなら、なぁ?」
祖父から相槌を求められた祖母がほんの少し涙ぐみながらうんうんとうなずいている。

高城さんなら、って、おじいちゃんもおばあちゃんも、高城さんがどういう人なのかまるで良く知ってるような口ぶりだけど……気のせいかな?

元々、高城クラウンホテルズは有名だもの、だから結婚を反対しなかったっていうのもあるのかもね。

そして私は数日後、とんとん拍子で高城さんとの結婚が決まり。私は今日のこの()き日に高城小春(たかしろこはる)になった――。