交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

浅見屋は祖父のこだわりでずっとどこの店ともコラボをせず、商品もテナントショップなどの置かない姿勢を貫いてきた。けれど年々売り上げが落ちてきて、祖父も考えを改めなければならないと、思い始めたそんなときに声をかけてきたのが木谷さんだった。確かに木谷さんのおかげで売り上げは右肩上がりになったけど、それなのにあとから立ち退きをさせようなんて、結局うちみたいな小さな店のことなんてどうでもいいのだ。

「それに、世間では薄々気づいてる人もいると思うが、木谷ホステルとは昔から因縁の仲でね、孫のほうは特に、ね」

自分のところは断られて木谷ホステルと契約をしていることが気に入らない。鋭く細められた瞳にそう言われたようでゾクッとする。高城さんはきっとビジネスにはストイックで芯の強い信念を持っているに違いない。

「確かに高城さんと婚約して木谷さんに紹介したら、きっと驚くと思います。向こうも高城さんのこと知ってるでしょうし……でも婚約しなくても偽装だけでも私は――」

「わかった。ここは正直に言おう」

高城さんが私の言葉を切って観念したように軽く両手を挙げた。そしてその手がすっと伸びてきて、私の膝の上にある両手をやんわりと包み込んだ。

「いきなりこんなこと言われても困るかもしれないけど……君に一目惚れしたんだ」