交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

瞬きを忘れて思わず短く声が出てしまう。それほど私を見下ろす男性に目を奪われた。そしてその彼も同じように目を丸くしてじっと私を見つめている。

「す、すみません」

気がつくと私はその男性にガシッと支えられ、しがみつくように身を寄せていた。

「階段から落ちそうになっていた」

そうか、先ほどの宙に浮いたような感覚は階段から落ちそうになっていたんだ。身体は全然どこも痛くないし怪我もしていないのを見ると、どうやらこの人が助けてくれたようだ。

やんわりと後ろに撫で上げた清潔感のある黒い髪は癖もなく、きりっとした切れ長の目は一見とっつきにくそうだけれど、深みのある濃茶の瞳が凛々しい。身長もスラリとして一八〇はありそうだ。のけぞらせて見上げるとゴクッと喉が鳴った。

「あ、あの……私、パーティーに参加していたんですけど、途中で気分が……」

やだ、もうだめ。

ホッとしたからか一瞬の隙をつくように再びめまいがやってきて、頭の中がクラクラしてきた。目を開けているのもつらいくらいだ。

「あ、おい!」

男性が私の身体を揺すっている。その感覚を最後に私の意識がぷつりと途切れた――。