交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

数年後。

「パパ―! ママー! 早く来て!」

それから紆余曲折を経て、私たちの間には小さな女の子が生まれた。砂浜に小さな足跡を残しながら(りん)が振り返る。その笑顔の中に私たち二人の面影が混じっている。

「湊さん、凛の髪の毛だんだん上手に結えるようになりましたね」

まだ小さいふたつ結びの髪の毛が潮風に揺れるたびに可愛らしくてキュンとする。

「可愛い娘のために練習したからな」

彼は普段、仕事もできてスマートで頼れる人。スーツを着こなし、誰よりも誠実で恰好よくて、私の自慢の夫。

「ふふ、そうですね」

「あ、笑ったな」

そんな彼だけど、娘の髪を結ぶのだけはどうしても上手にできない可愛い弱点があった。負けず嫌いな湊さんは、忙しい間を縫って凛の髪の毛を結べるように毎日のように練習していた。湊さんはどんな小さなことでも努力を惜しまず、できないことはできるようにする。私は彼のそんな姿勢が好きだ。

海辺の波の音と、小さな笑い声が混じり合う。湊さんが手掛けた高城クラウンホテルズ系列のホテルに、私たち家族で遊びに来ていた。オーシャンビューの素敵なホテルで三年前、まだオープン前のホテルに特別に連れてきてもらったことがあった。そのとき、私の頭の中で記憶が微かに疼きだす。

あれ? なんとなく、この光景知ってるような……?