とてもじゃないけれど先ほどまで私に愛想を振りまいていた人の言葉とは思えない。人が真剣に話をしているというのに木谷さんはのんきにビールを注文している。
「立ち退くなんて誰も承諾してませんし、祖父だって拒否してるはずです。ずっと先代から引き継いできた店なんです」
「うーん、そうは言っても実際、浅見屋はうちからの依頼がないとやっていけない感じなんだろう? そんなふうに細々と店を続けていく意味が理解できないな」
一生懸命祖父母が浅見屋を守り続けてきたことなんてこの人にはなんの関係もない。わかってもらおうなんて思っていないけど、やるせなくて悔しい。
「立ち退いてあの場所に新しくホテルを建設したって、あんな下町じゃ集客できるかわかりませんよ? 建てるならもっと都心のほうが――」
「小春ちゃん、心配は無用だよ」
言葉を切られて私は押し黙る。
一瞬、木谷さんの冷淡な一面が垣間見えた気がした。低い声で諭すような口ぶりだけど目は笑っていない。
「現在の浅見屋に客が来ないのは大通りに面していない立地のせいもあるけど、そもそものネームバリューが低い、こんなこと言いたくないけどホテルでの売り上げも正直そんなによくないんだよ」
うぅ……そこまでグサグサっと言われるとぐうの音も出ない。
さっきまで熱々だった店自慢のピザも、手つかずですっかり冷めきってしまった。でもここで食い下がるわけにはいかない。なんとして立ち退きの話をなかったことにしないと……。
頭の中であれこれ言葉を考えていると、木谷さんがニコッと笑った。
「浅見屋を存続さる方法がないわけじゃない」
「え……」
「僕と結婚するなら、ね」
そう言って彼はさらに唇の端を上げた。
「立ち退くなんて誰も承諾してませんし、祖父だって拒否してるはずです。ずっと先代から引き継いできた店なんです」
「うーん、そうは言っても実際、浅見屋はうちからの依頼がないとやっていけない感じなんだろう? そんなふうに細々と店を続けていく意味が理解できないな」
一生懸命祖父母が浅見屋を守り続けてきたことなんてこの人にはなんの関係もない。わかってもらおうなんて思っていないけど、やるせなくて悔しい。
「立ち退いてあの場所に新しくホテルを建設したって、あんな下町じゃ集客できるかわかりませんよ? 建てるならもっと都心のほうが――」
「小春ちゃん、心配は無用だよ」
言葉を切られて私は押し黙る。
一瞬、木谷さんの冷淡な一面が垣間見えた気がした。低い声で諭すような口ぶりだけど目は笑っていない。
「現在の浅見屋に客が来ないのは大通りに面していない立地のせいもあるけど、そもそものネームバリューが低い、こんなこと言いたくないけどホテルでの売り上げも正直そんなによくないんだよ」
うぅ……そこまでグサグサっと言われるとぐうの音も出ない。
さっきまで熱々だった店自慢のピザも、手つかずですっかり冷めきってしまった。でもここで食い下がるわけにはいかない。なんとして立ち退きの話をなかったことにしないと……。
頭の中であれこれ言葉を考えていると、木谷さんがニコッと笑った。
「浅見屋を存続さる方法がないわけじゃない」
「え……」
「僕と結婚するなら、ね」
そう言って彼はさらに唇の端を上げた。



