ホテルに入って気が付いたことがある。どこもかしこも真新しく、大理石の床なんて鏡のようだった。だけどレセプションには誰ひとりスタッフがおらず、ロビーに来客の姿もまったく見えなかった。たぶん、私と湊さんだけだったような気がする。時間も時間だったからかな、とも思ったけれどそれにしては静かすぎる。
彼が突き当りの角部屋の前でカードキーを翳し、ドアを開ける。
「入って」
その言葉に促されて一歩踏み入れた瞬間、目の前に広がった光景に息を呑む。窓の外には、闇の中できらきらと光る水面。先ほど潮風の匂いがしたからおそらく昼間はオーシャンビューなのだろう。深い紺色のカーペットが足元を歩くたびに柔らかく受け止め、壁に飾られたアートや、テーブルに飾られた真っ赤な花が鮮やかだった。
そして窓際には大きなラグジュアリーなベッド。シルクのように滑らかなシーツがふわりと広がっていて、一瞬頭に浮かんだなまめかしい光景にサッと目を反らした。
「ここのホテル、実は来週からグランドオープンなんだ。でも今日は特別の日だから、どの客よりも一番に君を連れてきたかった。誕生日おめでとう」
隣に立つ彼が笑って肩を引き寄せた。
特別の日って……湊さん、私の誕生日覚えててくれたんだ。
私の心臓がドクンと鳴る。私の誕生日なんて、きっと彼は知らないだろうと思っていたから、余計に信じられなかった。
あの花は……。
彼が突き当りの角部屋の前でカードキーを翳し、ドアを開ける。
「入って」
その言葉に促されて一歩踏み入れた瞬間、目の前に広がった光景に息を呑む。窓の外には、闇の中できらきらと光る水面。先ほど潮風の匂いがしたからおそらく昼間はオーシャンビューなのだろう。深い紺色のカーペットが足元を歩くたびに柔らかく受け止め、壁に飾られたアートや、テーブルに飾られた真っ赤な花が鮮やかだった。
そして窓際には大きなラグジュアリーなベッド。シルクのように滑らかなシーツがふわりと広がっていて、一瞬頭に浮かんだなまめかしい光景にサッと目を反らした。
「ここのホテル、実は来週からグランドオープンなんだ。でも今日は特別の日だから、どの客よりも一番に君を連れてきたかった。誕生日おめでとう」
隣に立つ彼が笑って肩を引き寄せた。
特別の日って……湊さん、私の誕生日覚えててくれたんだ。
私の心臓がドクンと鳴る。私の誕生日なんて、きっと彼は知らないだろうと思っていたから、余計に信じられなかった。
あの花は……。



