交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「不安か?」

「正直、少しだけ」

そう答えると、湊さんは運転席から手を伸ばし、私の手を握った。大きな手の温もりに胸の奥がじんわりと溶ける。

車はふたりだけの小さな世界だ。どこへ向かうのかもわからないけれど彼が隣にいるならそれでいい。

車は高速道路を抜け、約二時間ばかりマンションから離れた場所まで走った。湊さんの運転に安心してだんだん眠たくなってきたところで「ここだ」という到着の合図とともに車が止まった。車から降りると一番にふわっと潮風の匂いがした。だから海が近くにあるのはすぐに分かったけれど、夜だったからなにも見えない。

「小春」

「わぁ、すごい」

名前を呼ばれて振り向くと、そこにはきらめく大きな建物がそびえ建っていた。湊さんの手に引かれて、その扉をくぐると、空気が変わったように感じたエントランスへ入る。柔らかく光を放つシャンデリアが、建物の白い壁に映えて眩しい。

「ここは、ホテル?」

まるで別世界のようだった。どこからともなくふわりと香るアロマの匂い、そして、まるで映画のワンシーンのようなロビーの光景が広がっていた。スムーズにエレベーターに乗り、ラグジュアリーフロアと呼ばれる最上階へと上がっていく。