交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「そうか、そんなことがあったのか」

その日の夜、たまたま早く仕事が終わった湊さんに今日、木谷社長が私と祖父母に謝罪をしに浅見屋へ来たことを話した。こうしてふたりで隣り合わせにソファに座って他愛のない話をする時間は、私にとって貴重だ。いつまたこうしてゆっくりできるかわからない。そう思うと、ずっとそばにいたくて私は猫のように額を彼の腕に押し付けた。

「小春、もっとこっちに来い」

湊さんが私の肩をグッと引き寄せる。するとより密着して胸がドキリとした。

「仕事が忙しいのは言い訳として、本当に小春にはひとりで寂しい思いをさせてると思ってる」

心底申し訳なさそうなその声音に、私がふっと顔をあげると小さく笑う湊さんと目が合った。

「湊さんが一生懸命お仕事をしてるかっこいい姿を想像したら、寂しくても平気です」

結婚しても今まではなんとなくとなりにいても遠い存在だった。でも、身体が交わり心が通い、絆が結ばれたら手を伸ばせば届く距離まで近づいた気がする。

「そういえば、木谷さんは……今後どうなるんでしょうか?」

ふたりきりの時間に、他の男の名前を出されて一瞬、湊さんの表情が硬くなった。でも、これは聞いておきたいことだった。

「実は先日、木谷社長から電話がかかって来たんだ。息子が放火の疑いで逮捕されてかなり困惑していた」

湊さんは木谷社長とは昔からの馴染みで、息子とは違い同業のライバルではあるものの、考え方も気も合う同士で良好な関係を築いていたという。