交際0日婚、冷徹ホテル王はかりそめ妻を溺愛で堕とす

「小春ちゃん、仕事のほうはどう?」

赤ワインをひと口飲むと、不意に木谷さんから話を振られる。

仕事のほうはどう? って、ずいぶん白々しいこと言うのね。それとも私の顔色を窺いたいの?

前から思っていたことだけれど、はっきり言って彼は性格が悪い。そんなこと聞かれて困るとわかっているのに敢えて何事もなかったかのように聞いてくる。

「どうしたの?」

あなたのおかげで最悪です! 衝動的にこみ上げた言葉を慌ててグッと飲み込む。とりあえず苦笑いしてからなんて言おうか考えていると、木谷さんが私を心配げに見つめてきた。

「なにかあった? 小春ちゃんが元気ないと僕も嫌だな」

「だったら!」

そのわざとらしい態度にいい加減頭にきた。テーブルに拳を叩きつけんばかりの勢いで声を荒げると一瞬周りの目を引いた。いけない。そう思って小さく「すみません」と口にすると木谷さんがひょいと肩を竦めた。

「何か悩んでるって感じだね、話してごらん、なんでも聞くよ」

そんな余裕を見せつけられてもう黙っているわけにはいかない。そもそも私は木谷さんと食事をしに来たんじゃない、立ち退きの話や仕事の話をしに来たんだ。本来の目的が頭を掠めると、私は一度唇を湿らせてから口を開いた。

「祖父から聞きました。木谷さんから連絡があって、ホテルで展開してるうちの商品の注文をストップすると……」

「あぁ、その話か」

なんでも聞くと言っておきながら興味のない話だとわかると唇をへの字にし、前のめりになっていた身体を背もたれに倒した。その表情があからさまに「つまらない」と言っているようだ。

「木谷さんからの注文がなくなってしまうと、正直売り上げにかなり響いてしまうんです」

「でもどうせあの店は立ち退くことになるから、今注文をやめたとしても結果は一緒じゃない?」

「なっ……」