「あ、あの女王陛下……。もう、落ちつかれたでしょうか?何かお言い付けはございませんか?」

 みゆとガラちゃんの楽しそうな話し声が部屋の外まで聞こえたのだろう。
 ノエルがドアの外からおずおずと声をかけてきた。

 「ノエルだよ。いい?みゆ?ガラちゃんが教えた通りに言うんだよ」
 「え、ええと、なんだったっけ?」
 「あ、その前にガラティアラを頭にのせて。それから巨人の杖も忘れないでね!」
 「巨人の杖って、コレ?」

 みゆは左側のクッションにのっている金色の杖を指さす。

 「うん、それ」
 「巨人の杖っていうけど、そんなに大きくないね」

 みゆは右手にガラティアラをしっかり抱くと、左手で杖をにぎった。

 金色に輝く杖には、真っ赤なルビーがはめ込まれているが、長さはみゆの手首から肘までくらいしかない。
 太さも、中学生のみゆがにぎりやすい大きさで、しかも軽い。

 「巨人が使う杖じゃなくて、その杖で巨人を呼び出せるんだよ」
 「へえっ?面白そう!呪文か何か唱えるの?」
 「ううん、違う。何か条件が決まってるんだって!前の女王様は、その条件を備えていなかったから巨人を呼び出せなかったの。すごく悔しがって家来の人たちに、八つ当たりしてたよ」
 「ねぇ、ガラちゃん。ずっと気になっていたんだけど、前の女王様って、今はどうしているの?」
 「5年前の戦争で死んじゃったの。ちょうどその頃にアデラールが行方不明になって……。ガラちゃんは、とっても心配なの」
 「行方不明って、戦争で!?」
 「ううん、その少し前だよ。ガラちゃんは、女王様がアデラールをどうにかしたと思ってるよ。だってアデラールはずっと、女王様は強くてずる賢かったから怖がっていたよ」
 「前の女王が、あの男の子を……」

 だから、あの子は浜辺に来られなかったんだ――――。

 みゆは、先代の女王に激しい怒りを感じた。