「外に出られるの!?」
 「もちろん!ガラティアラは女王の証だもん。誰もあなたを止めたりできないもん」
 「でも、ノエルがさっきみたいにすごい顔して追いかけてきたら……」
 「ああ、ノエルは侍従だからついてくるかもね。あと、侍女や警護の兵士とかも100名くらい」
 「ヤダよ!そんなにいろんな人がついてきたら家に帰れないよ!!」
 「それなら、『わたくしは、お忍びで民の暮らしを見聞してきます。人払いをしなさい』って、ノエルに命じてみて。きっとうまくいくよ!」

 今ひとつ不安がぬぐいきれないみゆに、ティアラはいろいろとやり方を教えてくれた。

 「じゃあ、試しにお部屋の外に出てみたい」
 「うん!その意気だよ!まずは手始めにベッドから降りて、鏡の前でガラちゃんを頭にのせてみて!」

 ティアラに促されて、みゆはベッドから両足を降ろした。
 ベッドのふちを両手でぎゅっとつかみ、そうっとルームシューズに右足を入れる。
 ふわっとした柔らかな肌ざわりがして、履き心地はとても良い。
 みゆの足には少し大きいが、真っ白なもふもふ毛足が気持ち良い。

 みゆはガラティアラの前に両ひざをついて、しげしげとダイアモンドの輝きを見つめた。

 ガラティアラは、銀の台座に大小様々な大きさのダイヤモンドがはめ込まれていた。

 ティアラはブドウのツタと葉が絡まったような豪華なデザインで、全体は2枚の羽根が羽ばたいているみたいに見える。

 真ん中には、四角形のひときわ大きなダイアモンドがはめ込まれて、まばゆく輝いていた。

 一番大きなダイアモンドは、大きさが5センチほどもある。

 「あれ?何だろうコレ?」

 真ん中の一番大きなダイヤモンドの中に何かが入っている。

 みゆはティアラを両手で持ち上げて、じっと中をのぞき込んでみる。

 するとキラキラ輝く透明なダイヤモンドの中から、何か丸くて小さな生き物が、みゆの方をじっと見つめていた。

 「もしかして、この中に入っているのがガラちゃんなの?」
 「うん、そうだよ」

 声は真ん中の一番大きなダイヤモンドの中から聞こえてくる。

 「ううん?キラキラ光ってよく見えないよ」
 「ガラちゃんの方からはよく見えるよ」
 「へえっ、びっくりした!てっきりティアラがしゃべっているのかと、思ってた!ねぇ!そんな所にいないで外に出ておいでよ」

 みゆはなんだかうれしくなって、ダイアモンドの中にいるガラちゃんに話しかけた。

 ガラちゃんの姿をよく見てみたい。

 それに、こんなせまい宝石の中にいるなんて、なんだかかわいそうだ。

 「ガラちゃんはね、ここから出られないの」
 「え?なんで?」
 「外に出るために、ムリに宝石を割ったり壊したりしたら、ガラちゃんは死んじゃうの……」
 「うそ!?誰がそんなひどいこと言ったの!?」
 「前の女王様よ」
 「前の女王?私の他にもイソギンチャクに飲み込まれて、地上から来た人がいたの!?」
 「ううん、前の女王様はアスレイア王国代々の女王だったよ」

 ガラちゃんはさつきまでの明るい感じから一転して沈んだ声で、女王とアスレイア王国について話し始めた。